第13話 転移……じゃないよね?

 俺とサンタナは一度ミーナを家に返し、サンタナに連れられ、ちょうど空き家があるということで少し休息を取ることにした。


 空き家はベッドが1つにタンスが1つ、そして鏡のついた化粧台が1つあるだけの一室であった。


「鏡か……そういえば……」


 俺は鏡を見て思い出したことがあった。

 自分の姿ってどうなっているのかをちゃんと確認してなかったことだ。


 川に着いた時とコーラが落ちてきた時に自分の姿を確認する機会はあったが他のことに気を取られていたのもあり、川やボトルに反射する自分の姿は目の端に入る程度にしか映っていなかったのだ。


 俺はローグとの会話を少し思い出す。





「なぁローグ。さっき聞き忘れてたけど、俺って転移するってことでいいのか?」


 俺は家を取ってきたローグに質問をする。

 神様の娯楽話を聞いて気が動転してた俺は大事なことを聞き忘れていたのだ。


 転生とは一度死んだ人間が異世界で生まれ変わって生を受ける。

 ローグの話だと違う地球に行くだけ。

 そもそも死んでいない俺はただの引っ越しなのかと再度ローグに確認してみた。

 するとローグは


「うんにゃ、この後お主はちゃんと死ぬぞ」


 なかなか恐ろしいことを淡々と言ってきやがった。


「え?……俺………死ぬの?」


 ローグが転移ではなく転生と言っていたからおかしいとは思っていたが、勘違いではなく、ちゃんと転生することになっていた。


「1回だけじゃよ1回だけ。一瞬で死んで一瞬で新しい体になるから大丈夫じゃて」


「えっと……それ痛くないの?」


「うーん、わからん!」


「わかんないか〜〜〜」


 ローグの話はまるでおじいちゃんの与太話を聞いている感覚になる俺。

 怒る気にもなれずただただ気が抜ける思いをした。





「ローグとヴァルドランが姿形は決めると言っていたが。果たしてどんなものになってるのやら」


 俺は異世界で初めて自分の姿と対面することにした。



 ………………?。



「あれ………転生?」



 …………???……………………?????????。



 やばい、大パニックである。

 自分の姿を見てどう考えてもおかしな点があるのだ。


 身長は目線の高さから分かっていたが目測で175cmと昔の俺より5cmは高くなっている。

 腕や足、腹筋などもラインがしっかりと出ていかにも筋肉質!のような体にしてくれている。

 髪も黒髪ストレートから茶髪おしゃれ癖っ毛に変わっている。


 たしかに変化しているのだが……




「……か、顔………顔が………………顔が全く変わってなーーーーーい!!!」




 俺は鏡の前で大声で叫んだ。

 神様達のせいで洞窟に家がはまってた時のような仕打ちを受けた気分にさせらせれた。


 異世界転生漫画のお約束。冴えなかった主人公がイケメンに生まれ変わり、女性冒険者やエルフなどから言い寄られる。


「あいつら漫画読んだことねーのかよ!これ………ムフフなハーレム作れるようなキャラじゃねーよ!!!」


 怒りが沸々と湧いてくる。


 目はタランとした下り目で眉には眉毛とクロスする形で切り傷が1つ。鼻だちは高いわけでもなければ低いわけでもない。

微男子びだんし』、というのが簡単な俺の顔の評価である。


 俺はいつも見る変わらない顔を見ながら、どこかで見ているであろう神様に言う。


「神様!これはただのおちゃらけ予備校生ですよーーーーー!」



 冴えない顔のやつが浮かれて髪を染めてパーマ当ててみた。

 それイタイやつって陰口で言われるやつなんです。

 そんな転生ありませんよ。見たことないです。

 これ、転移の方がマシだったレベルです。

 神様、見てますか?

 本当に反省してください。

 これを機に漫画読みましょう。

 ちゃんと聞いててくれてることを心から願います。

 伊集院黄泉より。



 鏡の前で黄泉は胸に手を当て、心の中で神様宛に手紙をしたためるのであった。

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