第6話 能力を決めよう2

「親が払ってるからとか言い出したら俺が持ってるもの全部親が払ってるもんだぞ!スネかじり浪人生の俺が自分の金で買い物したことあるわけねーだろーーー!医者の息子なめんなよーーーーー!!!」


 俺は敬語も忘れ、恥ずかし気もなくローグに思いをぶつける。


 親がお金払ってるのは持っていけないってなったら、何も持って行けなくなる。俺に手ぶらで行けってことか?とローグに怒鳴る。


 怒り狂った黄泉には神様であるローグも困り果て、黄泉の住むマンションの一室丸々1つ(家の中の物も含む)を新しい世界に持っていくことを了承してしまう。


「悪かった、悪かったから。金やら携帯やらと言われたことはあったが家とその中身丸ごとって言ってきたのはお主が初めてじゃよ。なんでも1つとは言ったが……ずるいのう。しかも自分の所有物でない、親が払ってるものとな。はぁ、なんでこいつにしたんじゃろ。まー良い。わしはお主の家をを持ってくるでの。早くもうひとつの加護を決めといてくれ」


 ローグはそう言って、さっき使った扉を使い、元の世界に帰る。


 ふう、なんとかゴリ押しで意見通った。

 馬鹿みたいなこと言ってるとは思ったけど意外と言ってみるもんだな。

 家丸ごと持って行っていいなら生活に問題なし。

 あれ?異世界生活余裕で出来そう。




 この時の俺は家さえあれば今までとなんら変わらない生活ができると思っていたが、実はそんなこともないというのは、転生後すぐわかることであった。




「能力ってなんでもいいんでしたっけ?」


「ああ、なんでもいいぞ!空を飛びたいでも素早く走れるようになりたいでもなんでもありだぞ!」


「そうですか……じゃあ漫画系で1つなんかください」


「ん?漫画系?」


 ヴァルドランにかなり雑にお願いする。


 家があれば十分な生活が約束されたようなもの!と思い込んでるため、ぶっちゃけ能力などなんでもよくなっていたのだ。

 能力をくれると言われてるから考えてはみたが、数え切れないほどいっぱい思いつく能力から1つだけ選ぶのが面倒くさくなっていた。


 ヴァルドランはいかにも戦闘バリバリみたいな見た目をした神様。そんなヴァルドランに選んでもらった漫画主人公系の能力ならだいたい最強だろうと思った。


「よし、わかった。考えとこう。転生したら分かるようにしておく」


「転生した時の楽しみにしときますよ」



 転生前のお約束イベントである能力決めを人任せにしたせいで


『立ち読みのヨミ』


というなんともダサい二つ名で呼ばれるようになることは、この時の黄泉には想像もつかなかった。

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