第5話 能力を決めよう1

 俺は扉の中に入り、次の世界の神と会いに行く。

 扉を抜けて来たのが分からないぐらい、さっきと似た空間。

 1つ違うのは俺と神様しかいなかったところにまた1人、その空間に存在しているのだ。


「おっ、来たな。そいつが新しく俺のとこにくる人間か。ふむ、細いように見えて意外とガタイいいなお前。よく来てくれた。」


 自分の世界に来ることを喜ぶその新しい神は昔の神とは違う姿をしている。

 赤く、炎のように逆だった髪で、赤い衣をまとう、筋肉ムキムキの若々しい神様である。


 新しい神程ではないが俺も筋肉には自信がある。週三でジムに行くぐらいには体を鍛えていたのだ。漫画オタクの俺だが、モテモテになって恋愛はしたい。


 それに俺が読んだ『マッスルグリル~戦う料理人~』の第1話にも、「筋肉をつけて無意味なことは無し!全てにおいて始まりは筋肉である」って書いてあったから、何したいとか考えるよりも先に筋肉をつけておいたのだ。


「俺はヴァルドランって言うんだ。って言ったところで今から地球に行けば俺と会うことも無くなるかもしれんのか。言わなくても良かったか?ガハハハハ」


「伊集院黄泉って言います。てか神様にも名前ってあるんですね」


「おお、確かに言い忘れておったわ。わしはローグじゃ」


 2人の名前を聞けたのは良かった。新しい神様とか昔の神様って言い方になるのは正直面倒くさかったから。でもそうか、この2人とは転生したらもう会えないかもしれないのか。


「これから異世界に行くにあたって俺とローグからお前に加護をやろう。何がいい?好きなものを言え。俺はお前に1つ能力をやろう」


「好きなものと言われてもどういう世界なのかも分からないし、困ったな」


「ならわしの加護から先でどうじゃろう。わしの加護はお主のいた世界から1つだけ新しい世界に持って行けるというものじゃ。必要なものを言えば転生の時に一緒に持って行ける。ただし自分の持ってた物でないとダメじゃぞ」


 自分の持ってたものか。家族って言いたいけど連れて行っても迷惑だろうし。漫画は好きだから持って行きたいけど1つか。……うーん………あ、いいじゃん、これしかないな。


「俺の住んでるマンションの部屋丸ごと1つかな」


「えーと……あれはお主の親がお金を払ってるものであるからお主の物じゃないよ…」


「いや、黙れよ!!」


「ええぇ!!………わし一応お主の神なのに」


 史上初、創造主に黙れと食い気味にツッコみを入れた黄泉であった。

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