第8話 警察がやってきた

 昼時、朱莉あかりの前に警察が現れた。


「歌手の悠汰ゆうたさんの件でお話を伺いたい」

「なぜ、ですか? 私は悠汰さんとは面識がありません」


「失礼ですが、二つの不動産会社を通して、悠汰さんのマンションに内見に行っていますよね? 職業を偽って」

「それは……」


 確かに行ったけれど、悠汰の家をミニチュアにするための資料集めとして、だ。


「SNSで悠汰さんの部屋の写真を公開していますよね? 悠汰さんの部屋に出入りしていたのでは?」

「あれは模型です!」


「あんなにリアルな模型がありますか? あるなら、見せていただけませんか?」

「……昨日、ゴミに出してしまいました。嘘ではありません! 私はミニチュア作りが趣味で」


「もしそうだとして、悠汰さんの部屋の内部をどうやって調べたんですか? あなたが公開している部屋の写真は、悠汰さんの部屋とすべて一致するんです」

「偶然です! あの模型は、想像で作ったんです!」


 嘘ではない。だが、警察は朱莉の言葉を全く信じていない。不動産会社に職業や年収を偽って内見をするくらいだから、当然なのかもしれないが。

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