第4話 ミニチュア模型が完成する

 ◇ ◇ ◇

 

 帰宅後、内見で撮影した写真と悠汰ゆうたのSNSにあげられていた写真を何度も比較した。


「玄関はまるきり一緒だ。窓の造りも同じ。悠汰の部屋が違う間取りだとしても、今日、撮影した写真は十分参考になる」


 それから、スケッチブックを広げ、写真をもとに悠汰の部屋をスケッチした。

 だが、写真に取り損ねた箇所がいくつもあることに気付いた。


「これでは、完成に近付けない」


 朱莉あかりは日を改めて、別の不動産会社に足を運び、同物件の内見をした。

 資料が揃ったところで、朱莉は模型作りに心血を注いだ。

 悠汰がSNSで公開していたバッグや靴、カップ、ありとあらゆるものを精巧に作り上げていった。そして、それを完成した部屋に飾り、朱莉の想像する悠汰の部屋が見事に完成したのだった。


「完璧。どこからどう見ても、本物」


 朱莉は自身の作品に惚れ惚れとした。

 この悠汰の部屋を、一人でも多くの人に見てほしい。

 朱莉はそれをスマホで撮影すると、自身のSNSに投稿したのだった。

 

 ◇ ◇ ◇


 それから、明くる日も明くる日も、朱莉は悠汰の家を眺めていた。

 しまいには、樹脂粘土で悠汰に似せた模型まで作り、それを部屋の中央に置いて、「悠汰、おはよう」などと声をかけるまでになった。


 しばらくして、悠汰の熱愛疑惑が報道された。相手は有名なアイドルだ。

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