第3話 内見
◇ ◇ ◇
それから間もなく、不動産会社のサイトに悠汰の住む賃貸マンションの低層階の部屋が掲載された。
低層階とは言っても、朱莉の収入では家賃など到底払えない。それでも、中を見るくらいは許されるだろうと思い、翌日、仕事を休んで不動産会社に足を運んだ。
「駅から徒歩十五分以内の二LDKの部屋を探していたところ、この物件を見つけまして……」
と職員の女性にスマホの画面を見せた。
いくつか質問されることは最初から分かっていたので、事前に答えの準備をしていた。案の定、「ご職業は?」「年収は?」「勤続年数は?」と尋ねられたので、朱莉は堂々と嘘を並べた。
すると、とんとん拍子で内見が決まった。
女性職員の運転する車に乗り、マンションへ移動する。
ここが悠汰の出入りするエントランスか、などと感慨に浸る間もなく部屋に通された。
「こちらが玄関です」
「すみません。自宅に帰ってじっくり考えたいので、お部屋の写真を取ってもいいですか?」
「構いませんよ」
玄関、トイレ、浴室、リビング、キッチン、寝室、収納、ベランダ。怪しまれない程度にスマホで撮影すると、朱莉はまっすぐ帰宅したのだった。
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