第2話 自宅の写真

 この日から、朱莉あかりの生活は悠汰ゆうたを中心に回るようになった。


 ネットで配信されている曲は全てスマホにダウンロードした。悠汰に関する記事や写真もすべて保存した。

 悠汰のSNSはアカウント開設当時までさかのぼって、一文字一文字噛みしめるように読んだ。どこに行った、何を食べた、何を買った。どんな些細な情報も見逃さないよう、細心の注意を払った。


 その中で、朱莉の目を釘付けにしたものがある。

 悠汰が自宅で撮影したという写真だ――。


「これを、ミニチュア模型で再現できないかな?」


 朱莉はすぐにスケッチブックを取り出し、写真をもとに悠汰の部屋をデッサンした。写真に写っていない部分は想像で補った。

 翌日、朱莉はそれを元に模型作りを開始した。


 それが出来上がると、今度は悠汰の家の玄関作りに取り掛かった。

 廊下の姿見で自撮りしている写真がいくつもあったのだ。

 家具やインテリアなども、すべて再現した。


 だが、悠汰の部屋と玄関がどのようにつながっているのかが分からない。

 キッチンはどこだろう。浴室はどこだろう。部屋はこれだけだろうか。

 写真からの情報ではやはり限界があった。


 だが、朱莉はどうしてもこのミニチュアを完成させたかった。

 そこで、悠汰の住んでいる家を特定しようと試みた。家が分かれば再現できる。

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