第8話 とりあえず決闘しろ女

「こんな奴を屋敷に入れるなどあり得ない!」

「あり得ない!」

「チエはうるせぇ」


 領主の屋敷に連れて行かれ、しばらく衣食住の提供を受けることになった俺とチエ。

 さっそく執事のシローにこの世界の一般常識を教わっていたのだが、そこにいろいろ関わりたくない系の女が飛び込んで来た。


「こんな粗暴でうさん臭い男を使わずとも、わ、私がいるではないか!」

「そうだそうだー」

「チエは黙ってろ」


 家の中だというのに銀色の鎧姿の女。

 まだ人間の女は数えるほどしか見てないが、とりあえずこいつはデカい。今の自分とあまり変わらないぐらいの背丈で、鎧のせいもあってがっしりした見た目。少なくともチエとはだいぶ違う。

 いや、チエもデカいけど。いろいろ。



 シローが間に入って、ひそひそ話を始めた。

 当たり前だが、鎧女は不審者ではないようだ。いったん女が黙ったので、こっちも冷静に状況を分析してみる。


 現状は、よく分からないけど鎧姿の女が現れてギャーギャーわめき、チエが一緒になってわめく、ちょっとした地獄。

 いや、俺だってこれがあり得るかあり得ないかと質問されたら同じ答えになる。

 ただな。


「シロー。やはり納得がいかん」

「そう申されましても…」


 説得は不調に終わったらしい。

 分かりやすく怒った顔で、こっちに近づいて来る。

 ぶっちゃけ、眉毛を吊り上げてなければ普通に美人だと思う。


「つまり、君は領主を批判しているわけだ。領主の判断は間違っている、あり得ない、そういうことだ」

「そうだそうだー、領主が悪い!」

「ぐっ…、け、決してそのような…」


 で。

 俺は衣食住保証の環境を守るため、適当に口答えしてみる。

 この女も、あんまり頭良さそうに見えないんだよな。

 というか、チエはバカの振りをしているだけ。こいつの方が本物って感じがする。


「とにかく私と戦え! 戦わない奴など認めない!」

「認めない!」

「お前に認められたくない」

「何を!?」

「お前じゃないチエだ」


 とりあえず鎧女とチエは混ぜると危険。

 そして腕に覚えもない俺が戦うって何の冗談なんだ。

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