あらすじ

「先代が飼っていた猫の面倒を見ること」

 それを条件に、猫飼融は遠縁の所有する家に住み込むことになった。

 「猫屋敷」と呼ばれる古い一軒家に住んでいたのは個性的な猫たち。『竜胆』『蘭丸』『菊千代』『百合若』『ジャスミン』、そして『椿』。

 彼らはただの猫ではなかった。人語を理解し、人に変身し、おまけに歌って踊れる『化け猫』だったのだ。

 驚きはしたものの、融は柔軟な思考で彼らを受け入れ、猫屋敷で暮らし始める。

 そして、融が趣味でやっていた「踊ってみた」系の動画配信に、人に化けた猫の一匹が映り込み、あまつさえ一緒に踊ってしまったことから事態は動き始める。動画が評判を呼び、地元の町起こしイベントからライブ出演の依頼が来たのだ。

 断りきれず、融と6匹の化け猫は『ダイヤモンド・ストレイキャッツ』と名乗ってイベントに出演、これまた成功を収めてしまう。

 金銭的な事情もあって、そのままアイドル活動を始める融と化け猫たち。にぎやかで幸福な、ドタバタした日常。

 しかし、その時間はいつまでも続かなかった。化け猫のふりをした椿の本性、鵺としての妖力が察知され、日本国内の退魔勢が動き出したのだ。ほぼ同時に、配信された動画からジャスミンの呪いの指輪の存在に気付いた欧州の呪術師が日本に乗り込んでくる。

 三つどもえの争いに巻きこまれた融と化け猫たちは、竜胆・蘭丸・菊千代そしてジャスミンを欧州勢に奪われ、国内勢に椿を封印されてしまう。

 欧州勢はジャスミンに取引を持ちかける。ジャスミンの指輪は古い呪具で、今は再現不能なロストテクノロジー。呪いを解除するから、代償として指輪を譲ってほしい。ただし、解呪の儀式の生け贄として竜胆・蘭丸・菊千代の命を使うことになる、と。即諾するかに思われたジャスミンは、化け猫3匹の犠牲をためらう。だが結局、承知してしまう。

 一方、国内退魔勢からは、古い妖怪から、源頼政に退治された鵺は人間に仇を為さなかったという証言が出る。解放された椿は、融と百合若に乞われて、欧州勢に奪われた4名を救出する決意を固める。お詫びも兼ねて国内退魔勢も協力を申し出る。

 日本vs欧州の呪術合戦は、地の利&ジャスミンの「この猫たちを見捨てたら自分は畜生以下だ。それくらいなら人間に戻れなくてもいい」という決心のおかげで、日本の勝利に終わる。そして、国内退魔勢の現代テクノロジーにより、ジャスミンは左手薬指と引き替えに呪いから解放される。指輪はそのまま噴火中の西表島の火口に捨てられる。

 数日後「ダイヤモンド・ストレイキャッツ」がライブで重大発表を行う。重大発表とは……椿は実は化け猫ではなく鵺なので、尻尾を猫ではなく蛇に替えるというものだった!

 真実を知るもの達は何バラしてやがんだと頭を抱え、何も知らないファンたちは「化け猫でも鵺でもステキ!」「蛇の尻尾キモかわいい!」と大喜び。

 化け猫と鵺と人間たち、にぎやかで幸福なステージは、これからも続いてゆくだろう。 (おわり)

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