"アタリ"の案件

第31話 ああ、畜生

(嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ……!)


 オレはショッピングモールの椅子に座り込んで頭を抱えていた。

 心臓がバクバクと暴れている。全身から嫌な汗が噴き出してきて、鳥肌が止まらない。体が震える。

 怖い。

 顔をあげればまた……また、アレがいるかもしれないから。


(まさか……"アタリ"の案件……!? これがっ……アタリ……!?)


 オレは目を閉じていた。なにも見たくなかったから。

 でも、間違った対応だったかもしれない。

 目を閉じて、視界が闇に覆われたせいで、余計に色々な気配を感じる。

 周りを歩いている買い物客やら、忙しそうに歩き回る店員やら……


(今、オレの目の前に……誰か立ってないか……!?)


 気配がする。感じる。誰かが立っている。反射的に、さっき見たアレを思い出してしまった。アレは嫌だ。

 アレは嫌だアレは嫌だアレは嫌だッ!!


 こんな……こんな目にあうくらいなら、最初からやめておけばよかった。

 よく考えてから行動するべきだったんだ。軽率だった。甘く見ていた。間違ってたんだ。

 考えたこともなかった。こんなことになるなんて。

 ああ、畜生――


(こんなことになるなら、オカルト同好会なんか入るんじゃなかった……ッ!)

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