第30話 報告書

報告書 No. 1102849

県立矢間手高等学校 オカルト同好会


作成者 上野恭介


分類1:都市伝説


分類2:協力者からの情報提供


内容:小金井通りのゲームセンターにあるビデオゲームに妙なハウスルールがある。『夜七時半から八時の間にプレイしていると、扉をノックされる事があります。もし扉をノックされた場合、何があっても扉の方を見ないでください。トラブルがあっても当店では責任を負いかねます』という内容で、該当時間にゲームを遊ぶと霊障が発生するらしい。

 例1 ノックをされる

 例2 扉を乱暴に叩かれる

 例3 ゲーム画面の明滅や停止などのバグ


接触可能な当事者:なし


当事者詳細:インタビューを行った限り、実際に霊障に遭遇した人物はおらず、張り紙と噂のみを認識している者にしか接触できなかった。


当否:現地訪問にて確認


実行日:●●年●●月●●日(月)


証明者:1−C 上野恭介(部員)


同行者:なし


詳細:協力者による情報提供を頼りに該当場所を訪問。客にインタビューを行うも、ハウスルールを認識し、守るべきという意識はあるものの、実際に体験した、あるいは体験した人間を知っているという人物とは接触できず。該当時間十分前に該当筐体へ入り、ゲームプレイを行う。七時四五分頃、霊障が発生。

 まず小さなノックがあり、扉の方を見たところ、オレンジ色のパーカーを着用し、顔が変形した幽霊と遭遇する。目があった途端、攻撃的な力で扉を横断され、その後扉を強制的に開けられそうになる。扉を押さえ、十分程対抗した後、全ての霊障が収まる。

 直後、背後に移動していたらしい霊に右肩を引っ張られる。

 扉を開けて脱出しようとするが、今度は扉が開かず、やむを得ず蹴り開けて脱出。その後霊障はなく、体調不良などの後遺症もない。

 該当筐体は現在もそのゲームセンターに存在しており、ハウスルールもそのままである。

















――――――――――


・次回予告・


 オカルト同好会部の一年生、目黒誠はやる気に満ち溢れていた。


「オレこそが二年後の部長に相応しいんだ。だってオレより詳しい奴なんて同世代にいないんだから」

 

 入部届を一番に出した上野恭介にだけは負けたくない目黒は、外部から持ち込まれた噂を調査する活動『案件調査』を積極的に行っていく。


「オカルトの案件は本物に当たると冗談でなく祟られる。これで酷い目にあった部員は数えきれないほどだ。部が取り潰しになってしまうから部外者には秘密だがね」 


「あの、すみません。ええと、昨日フィールドワークで調査した件なんですが、投書にあった通り 不気味な“なにか” を確認しました。部長、報告書を作成しますか?」


 上野の手柄に焦る目黒が引き当てたのは、ショッピングモールで行う降霊術の噂だった。


(まさか……"アタリ"の案件……!? これがっ……アタリ……!?)


 こんな……こんな目にあうくらいなら、最初からやめておけばよかった。

 考えたこともなかった。こんなことになるなんて。

 ああ、畜生――




 次回

『 "アタリ"の案件』

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