第21話 珍しいと思ったよ

 その日俺は部活で帰りが遅くなって、真っ暗な帰り道を急いでいた。

 別に今じゃ珍しいことでもないが、中学に上がったばかりの頃だったからな。まだ夜道を歩くのに慣れてなかったんだ。

 街灯もまだ青くなくて、白い蛍光灯がチカチカ瞬いていた。冬だったからか、歩道には誰もいなくてな。ちょっと不気味だったよ。

 

 帰り道を半分くらい行ったところだったな。歩道についた植え込みを指さしてる幽霊がいたんだ。


 真っ黒な人影で、何も言わず、動かず、ただ植え込みを指さしていた。草の背が高くて何があるかはまったく見えない植え込みだ。

 普段見る幽霊は大体動いてるか喋ってるかだから、珍しいと思ったよ。


 でも、今まで関わってきた幽霊は例外なくクソだったから、殴って消しちまおうかとも思ったけど、なんか妙に気配が薄いし、特に害もなさそうだったからスルーしたんだ。


 それから何日も、幽霊は同じ場所に立っていた。立って、植え込みを指さし続けていた。

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