指差し幽霊

第20話 聞かせてください、先輩

「せーんぱーい! 神田せんぱーい! 帰りましょー!」


 大規模な職員会議で部活が休みになった日の放課後、上野が二年のクラスにやってきた。当然のように駆け寄ってきて、俺の帰り支度を待っている。

 こいつは知り合いができたら毎日通い詰めるクセでもあるのか?


「お前、わざわざこっちの教室まで来なくても同級生とかと帰ればいいだろ」

「えーいいじゃないですかー! どうせ先輩ひとりで帰る予定だったんでしょ?」

「うるせぇな、一言余計なんだよ」


 部活がないだけあって教室はもう誰もいない。上野はちゃっかり椅子に座り、俺の帰り支度を待つ体制だ。


「気になってたことがあるんですけど、先輩の見た幽霊で印象に残ってるのはなんですか?」

「あ? あー……そうだな……」


 好奇心にキラキラ輝く目が俺を見てくる。オカルト同好会に入りたくて高校受験無理したくらいだから、半人前の祓屋ですら気になってしょうがないんだろう。正直何でそんなに死んだ連中に興味があるのかわからない。関わらないほうが良い連中だ。上野と知り合ってから何度か忠告したが、馬耳東風というか、手応えがない。

 でもまあ、後輩が懐いてくれるなら無碍にはできない。帰宅部の俺には無縁だったはずの存在だ。せっかく懐いてくれてるんだから、聞かれたことくらい答えてやりたい。正直幽霊のことより、勉強について聞いてくれたほうが俺の心情的には楽なんだが。


「……ほとほと困ったってわけでもねぇけど、痛い目見せられた奴はいるな」

「えっ! どんな奴ですか! 聞かせてください、先輩!」


 上野が目に見えてワクワクし始める。先を促す視線を受け、俺はノロノロと帰り支度をしながら、四年前の思い出を語り始めた。

 あれは俺が中学で、まだバスケ部に入っていた時の話だ――

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