第3話 お前の肩の
「あのカーブミラーの人、どんな人だか先輩わかりますか?」
翌日、緊張感のきの字もない上野にそんな事を聞かれた。少しは反省したりトラウマになったりしたらどうだと思ったが、そんな殊勝な人間は俺が祓えるのは雑魚だけという言葉をちゃんと聞き入れただろう。怒るだけ無駄だ。怒るだけ無駄だが腹は立つので脛を蹴っておいた。
「理不尽な痛み! なんで⁉」
「……あのカーブミラーのあたり、神社かなんかあっただろ」
「唐突な脛蹴りにまったく説明がない……よくわかりましたね。神社っていうか、石碑なんですけど。事前調査で地図調べたらありました。なんの石碑かはよくわかんないんですけど、関係アリなんですね」
「多分な。詳細は知らん。でも祀られてた奴だろうなとは思う」
上野が目をキラキラさせている。こりねぇな。死にかけても脛蹴られてもこりねぇんだな。ある意味凄いわ。
「あれはかなり殺意の高いやつだ。実際に見てたらどこまでもついてきて害をなすだろうな。傷のこともあるし、センセイに相談してみる」
「相談してマズいってなった場合、先輩のセンセイってこの辺りまで来てくれるんですか?」
上野は何やら部活の用事でカーブミラーの事件をまとめているらしい。報告書作成に必要とのことだ。俺は同行者ということで放課後付き合わされている。業腹だが、用事があるのは良いことだ。
「センセイは熊野商店のばあちゃんの姪っ子だぞ。仕事の都合もあるだろうが、帰ってくること自体は問題ないだろうな」
「あー、あの商店街の一番古い店……あのおばあちゃん苦手なんです。なんかやたら見てくるし」
俺は少しだけ視線を上野に向けた。正確にはあいつの左肩。カーブミラーに映ったものの実物を見ようとして、上野が引っ張られた方の肩。
「ばあちゃん、見えなくても雰囲気はわかるからな。感じるんだろ、お前のその肩の……」
「あー……なるほど。だからなんですねぇ」
上野はただ、困ったように笑うだけだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます