第14話 君たちはどう勉強するのか

ブックオフに行きたい気持ちをグッと抑えて塾の扉を開ける。

「うぁ読みたかったやつある」

伊坂幸太郎の砂漠を入ってすぐの本棚で発見する。

菱沼ひしぬま先生、これ借りていいですか?」

職員室でクリームパンと謎の言語(アルファベットではない)が書かれた袋に入っている謎の物体(パンではない)を食べている菱沼先生に声をかける。

「センスいいねー!!」

この塾には本が溢れている。そういう表現とかじゃなくて実際に本棚から溢れて床に積まれているものもある。

そしてその全てが菱沼先生の私物である。


「俺あります」

授業中、そう言って手を挙げたのは須田野くん。

「楽しいよねあれ!!」

須田野くんにキラキラと目を輝かせて賛同したのは今年子どもが生まれる塾長の松坂まつざか先生。

「「乾電池の分解」」

…。良い子は真似しちゃダメだよ。

しかしそんなことも、授業が終わり乾電池の仕組みを理解すると言えなくなってくる。

だって感動するもん。中見たくなっちゃうもん。

ちなみに須田野くんはメガネの上から保護メガネをかけてガチで分解。

松坂先生は壁に乾電池を投げつけ、できた裂け目にマイナスドライバーをぶち込み分解。


英語の授業中は母語を聞けない。それはずっと英語で喋っているから、というようなわけではなく。

「せやからここは①になるんよ」

栗鼠原りすはら先生がバリバリの関西人だからである。

「ボブが犬の散歩してたらな」

栗鼠原先生は画伯だ。

毎回授業で出してくれるボブも犬も非常に愛らしいフォルムである。

写実的な絵だけが素晴らしいわけじゃないんだ、うん。


平日は、塾が終わる時間とお父さんの仕事から帰る時間がちょうど重なるため、迎えに来てもらうことが多い。

サーフボードの固定できるバイクが目の前に止まる。

「今日どうだった?」

リュックを足元に置いてもらい、後ろに乗る。

「楽しかった」

夜になるとまだ少し冷たい春風を切っていく。




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