生徒会に入ったのはいいものも、苦労がこんなにあるとは思わなかったよ!

芳乃しう 

第1話

「どんだけやれば終わるんだよぉ...」

そんな声が出るほどの書類の多さだった。5月が終わる1週間前、爽やかな風が吹いている季節のことだった。

ふと周りを見てみるとさっきまでいたはずの生徒会メンバーが全員いなくなっており生徒会室の中に残っているのは俺だけになっていた。

あいつらいつの間に帰ったんだよ...

足音全くしてなかったぞ...

ていうか書類全部押し付けかよ!

少しぐらい書類片付けてから帰ってくれよ!

しかもお茶飲むために出してきたコップも片付けてないし。

はぁ...ほんと疲れるなぁ。

しかし変な違和感を感じる。おれ

この違和感は何なのだろうか?

まぁいい

何も説明がないと困惑すると思うので今の状況の説明でもするとしよう。いや別に誰に言われた訳でもないし、別にあなたの為じゃないからね!ほんとだからね!ほんとだか(ry




ここは私立桜葉学園。中高一貫性の高校で100年の歴史を持つ県内でも有数の高校の1つだ。昨年までは女子高だったのだが、周辺の高校との競争などにもより今年から共学制になりその長い歴史に終止符が打たれた。学校長曰く「これは伝統の終止ではなく伝統の進化なのである」らしい。いやまぁよく分からんのだけど。学校の場所の詳細を書くと少しめんどくさいので東京と千葉の間ぐらいにある学校だと考えてもらえばいい。

そんな由緒ある高校でなぜ今俺が書類を前に涙目で愚痴ってるかと言うと。毎年桜葉学園では6月の初めに文化祭が行われる。早口言葉に使えそうなぐらいの言いにくさだが桜葉祭と呼ばれるものである。各クラスの出し物(露店やお化け屋敷など)や演劇部による劇。有志発表による漫才や先生達の茶番。様々な事が毎年行われている。ちなみに去年はまだ女子校だったのでスカートめくり大会があったそうだ。いや、ちょっと待ていくら女子高だからってそれは駄目だろう...大丈夫かよ...この学校...

まあそれはともかく今現在そんなコミカルな桜葉祭のための議事録まとめや各出し物の承認に生徒会が駆り出されているにも関わらず自分以外全員が帰ってしまったので絶望に打ち砕かれているのである。桜葉祭まであと1週間しかないと言うのにこの書類の量...まだ明日からも増えるそうなので少し鬱気味だ。

ほんとまじなんで帰ったんだよ...


そんな時、不意に生徒会室のドアが何者かによって蹴り開けられた。蹴り開けるってほぼ使わない単語だよな...まぁそのくらい今入ってきた人は特殊な人なんだけど。


「なんだ、まだ帰ってなかったのか?」


美しい薄紫色のロングの髪の毛、整って可愛らしい顔、その顔にある目はサファイアを思わすような綺麗な碧眼、スラットした足とボディライン、そして透き通るような声、生徒会長でありながら学年1の成績を持つ人、俺の1個上の先輩、城ヶ崎 瑞希先輩である


「それはこっちのセリフですよ!ていうかいい加減ドアを蹴り開けんのやめて下さい、毎回俺が修理してるんですよ!」


何故か自腹で俺が修理してるんだよなぁ、お陰で変な木工技術身に付いちゃたし。


「心外だなぁ、私もわざとドアを蹴り開けてる訳じゃないいのだよ」


先輩は惚けたように頭を掻きながら言う


「じゃあなんか理由でもあるんですか?」


俺は畳み掛けるように素早く言う

そうすると先輩は嬉々とした表情で


「ストレス発散だよ」


「確信犯じゃねぇか」


その事だけにどれだけのドアが犠牲になってんだよ。

ひっそりと心の中で毒づいた。

しかしいちいち文句言うのもめんどくさかったので俺は切り替えて言う


「まぁそれはともかくいつの間にいなくなってたんですか?こっちは書類が多くてきついのなんのって.....って聞いてますか!!」


先輩は俺の話に耳を傾けもせず、生徒会室にあるパソコンでゲームを始めていた。



「なんだ、さっきからうるさいなぁ君は、せっかく今楽しいところなのに、チッ」


会長は不満顔で俺を凝視しながら言った。


「いやなんで俺が怒られてんだよ」


それと今舌打ちしたかこいつ、

そんな俺のツッコミに対して不快感を覚えたのか先輩は真面目な顔つきで俺の正面に立った。


「先輩に大してタメ口はダメだぞ君ぃ、もっと先輩を敬う気持ちを持って先輩に接するようにしな。」


コツンと頭を叩かれた。少し反省もしたが怒りも残っていたので


「すみませんでしたー」


思いっきり棒読みで言ってやった。また突っかかってくるかと思ったけれど、ゲームに夢中のようだ。

しかしほんと見た目と性格が合わないなぁ...静かにして椅子に座って本でも読めば絵になるだろうに。

しかしまだ用件を果たしてないのでちゃんと理由を聞かなければ、


「さっきも聞きましたがなんでいきなり俺以外の生徒会メンバー達はいなくなったんですか?」


またボケるかと心配だったが先輩はゲームをやりながらも真面目に答えた


「いや、その事なんだが君が作業の途中で寝てしまっていたからな、それで君がここ数日徹夜をしている事を思い出して、寝かせてやろうと生徒会メンバーで考えてな、ホワイトボードに書き置きをしていたはずだが?」


俺はその言葉を聞いてすぐさま生徒会室の前方にあるホワイトボードに目をやった。

確かにそこには「先に帰るからちゃんと戸締りして鍵を掛けてでてきてね」という淡々とした文字が並べられていた。なるほど、俺は眠っていたのか...妙な違和感を感じていたがそういう事だったのか...。

しかし自分が寝ていたという事に気づもせず会長たちを悪く言うような言い方は駄目だったな、謝らないと


「すみませんでした、てっきり俺を置いて仕事押し付けて帰ったのかと思っちゃってました。」


すると先輩は優しく微笑みながら俺の肩を叩き


「そんな事気にするんじゃないよ、私達は人間なんだからさ、たまにはミスや失敗もする。それをフォローし合うのが普通と言うものだよ、だからこそ生徒会には多くのメンバーがいるんだよ」


「会長...」


メンバー4人しかいないけどね、とツッコミたかったけど今の自分にはありがたい言葉だった


「ありがとうございます、少しだけ励まされました。」


そう言うと会長は今日一番の満面の笑みで


「そうだよな!私が言った事は正しいよな!別に今日お前の飲み物だけに睡眠薬いれちゃったのもミスだよな!フォローし合おうな!ほんとなにか言われるんじゃないかと怖かったんだよなぁ、でも解決だな!」


「............................」


生徒会室に沈黙が訪れる。

しかしその沈黙は1秒と持たなかった


「ふざけんじゃねぇよぉぉお!!」


時刻はもう夜の8時を回っていた。


会長への好感度が少し上がって少し落ちた、そんな1日だった。


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生徒会に入ったのはいいものも、苦労がこんなにあるとは思わなかったよ! 芳乃しう  @hikagenon

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