水島新司と漫画家X
水島新司とは言うまでもなく、野球漫画の第一人者である。『ドカベン』や『あぶさん』など多くのヒット作を描いてきた。野球漫画にリアルな描写を持ち込んだパイオニアでもある。野球選手のリアルなフォーム、グローブやスパイクなどの描写において、後進の漫画家に多大な影響を与えてきた。
お兄ちゃんの本棚には多くの水島漫画がそろっていたので、僕は片っ端から読みふけっていた。『ドカベン』(高校編)から入って、『野球狂の詩』『一球さん』『球道くん』『野球大将ゲンちゃん』など。小学生でありながら、水島野球ワールドにどっぷりはまっていたのだ。
最も熱中したのは『あぶさん』である。青年誌連載だったせいか、内容は大人っぽい描写が多い。初期はその傾向が強く、時にはHなシーンもあった。だから夢中になって読んでいたのかもしれない。
水島新司はリアルな野球漫画という新機軸を打ち出した、と言われている。登場する野球選手は皆、生き生きとしているし、漫画世界とはいえ、実際に彼らのプレイを見ているような感覚があった。
もちろん、漫画としても面白さ、かっこよさを備えていることは言うまでもない。水島漫画のバッティングフォームとピッチングフォームは最高にかっこよかった。僕は下手なりに何度も模写をしたものである。
僕は本当に、水島漫画が大好きだった。だから、初めてXの野球漫画『Z』を読んだ時、大いに驚いたし、お兄ちゃんと同じように腹が立ってきた。
もちろん、Xの『Z』は水島漫画のパクリだらけだったからだ。
Xが野球漫画『Z』を連載していたのは、20代の前半だった。Xにとって水島新司は一回り以上の年長者であり、漫画の大先輩にあたる。その大先輩が試行錯誤の上に作り上げた絵やテクニック、アイデアをXはパクったのである。
『Z』が連載をしていたのは昭和50年代である。当時は大らかな時代だったので、パクリが容認されていたのだろうか? いくら何でも、それはありえないと思う。
水島新司は当時、リアル野球漫画の魅力を発揮して、多くの連載をもつ第一線の漫画家だった。パクリたくなる気持ちも理解できるが、それをやってしまっては終わりだろう。それぐらい、小学生の僕にもわかる。
腹立たしいことに、Xの野球漫画『Z』は主人公の設定からして、水島漫画のパクリだった。『あぶさん』の主人公,景浦安武は代打男なのだが、『Z』の主人公も全く同じである。断っておくが、『あぶさん』の連載が始まったのは『Z』の始まる三年前なので、Xの方がオリジナルという可能性はゼロだ。
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