13 毒毒
Side:真理
最近は慣れてきたリザとの魔物退治。
私とリザは15階層にいた。
上級者の主な狩場というそのエリアで、ウキキと吠える大きな猿の魔物と私より大きな毒持ちの蛇、岩壁の天井付近に巣を作っている大きな蜘蛛の化け物といった精神ストレスの高い魔物が出現していた。
それらをリザが次々に拳でバーンと粉砕してゆくの眺めるという修行を行っていた。
ここ3日ほどこのエリアで戦っているので初日には蛇と蜘蛛の悪夢を見てしまった。猿はいいけど蛇と蜘蛛はダメだ。何と言うか見た目ヤバイ。生理的に無理。
とは言え私はいつものように『結界』を使いながらたまに魔物たちの動きを止めるお手伝いをしたりする程度である。それでもレベルは上がってゆく。
後は戦利品となる魔石やたまに落ちるふわふわした猿の毛皮、綺麗な紫色の蛇皮、絹の様に上質な蜘蛛の糸を回収して魔法の袋に詰め国する簡単なお仕事をしながら進んでゆく。
オークやオーガは魔石だったけどここまで来ると本当に魔窟ってなんだろう?と思ってしまうドロップ品が多い。猿と蛇の皮は綺麗に加工されている。蜘蛛の糸については薄い板に綺麗に巻かれている。謎過ぎる。
リザに聞いてみると魔窟自身が魔物のようなもので、人を誘い込んでその魂を喰らい成長するためのエサを用意すると考えられている。と教えてくれた。少し納得しつつも修行は続く。
そしてレベルアップにより魔力が250になった時、ステータスを確認すると新たなスキルを覚えることができた。
――――――
『状態異常回復』全ての状態異常を回復する光の精霊の力
――――――
「これで真理様がうっかり毒になっても大丈夫ですね」
リザに伝えるとそう言って笑われた。
実は昨日、興味本位で毒蛇の吐いた紫色の唾液を触って毒状態になったのだ。蛇の毒液は暫くしたら魔窟に吸収されるように消えるし、なんだか綺麗に光る紫色だったし……爪に塗ったら綺麗かな?なんて思ってしまったんだ。
少し慌てたリザが魔法袋から取り出した激不味な解毒剤で回復したけれど、暫く口の中が不快感でそれが消えるまでにかなりの時間を要したのだ。ちなみにお口直しのおすすめはアッポジュースである。
「いやリザ、私はもう学んだよ。好奇心は猫をも殺すと……」
「猫?猫を殺すんですか?」
日本のことわざが伝わるわけはなかった……
「この話はもう終わりにしよう」
そう言って首を横に振りって話を終わらせた私。
帰りがけに一度『状態異常回復』を使ってみたら魔力がごそっと抜け落ちる感覚にボーっとしてしまった。どうやらかなり燃費が悪いスキルのようだ。
「使う時には魔力の消費度合いも考えないと気絶する系のスキルですね。注意してくだいね」
超心配された。私もそう思う。
そんなこんなで私の修行は続く。
今夜は蛇と蜘蛛に襲われる悪夢を見なければいいのだけど……リザと一緒に寝ようかな?そう思ってリザをジーっと見ると、当然の様に何も分からないリザが「どうかなさいましたか?」と小首をかしげる。キュンとしてしまう。
「何でもないよ。リザが可愛かっただけ」
「ふ、ふざけてないで帰りますよ?」
一瞬だけ狼狽えたリザを見て満足した私は帰るためにリザの後ろにくっついて歩くのだった。
――――――
真理 ジョブ:聖女
力55 硬40 速65 魔265
アクティブスキル 『結界』『回復』『状態異常回復』
――――――
Side:真司
俺は王都の南側の森の中の拠点で目が覚める。
オルトガの魔窟ではレベルがほぼ上がらなくなってしまった俺は、拠点を移すことを決め、王都の南、森の中に移動してその森で新たな眷属を得ることにして移動したのだ。
そこではまず小さな
そして風を操る
もちろんレベルも上がったし眷属が増えた事により能力値もかなり上がった。
その成果に満足した俺は、遂に王都に向かう決意をして今日は朝食後に向かう予定であった。もちろんミーヤ以外は拠点でお留守番だ。
オルトガでそれなりに資金を貯めていた俺は、髪色も瞳も綺麗に青く染まる魔道具とステータスなどを偽装する指輪も購入済みだ。ギルドの鑑定も騙せるほどの魔道具でそれなりに高く、かなり痛い出費であった。
だがバロンたちに別れを告げた際、餞別で酒やら食料やらを貰ってしまい、食うに困ることはないだろう。ぶっちゃけるとミーヤが大量に食料を確保してるのでそもそもが食いっぱぐれることはないのだが……
とりあえずはと偽装の指輪に手をかざし、ジョブを戦士に偽装する。それぞれ200近くまで上がっていた能力値も半分程度に減らしておいた。これなら極普通の中堅戦士ですとごまかせる程度だろう。
「よし行こう!」
朝食を終えた俺は立ち上がり、王都への出発を眷属たちに告げた。
「ニャー(畏まりました魔王様!)」
「チュー(私たちも連れてってください魔王様ー!)」
ミーヤの返事に続けて3体ほどの
「分かったよ」
そう言うとその三匹が俺の影の中へと消えていった。
そして王都へと出発した俺は何事もなくギルドにたどり着く。
「いらっしゃい、見ない顔ね」
「ええ。王都には最近越してきたので。登録お願いしても良いですか?」
「えっ?新規登録?見た目結構鍛えてるように見えるけど?」
「田舎から来たので登録は初めてになります。野良の魔物を狩る程度は出来ているのでいっそのこと冒険者に、と思いまして……」
そう言って偽装用に腰に差している長剣をローブを少しずらして見せると、受付のお姉さんはニッコリと笑って一枚のカードを出してくれた。もちろん長剣はオルトガで貰った長剣だ。3本程確保してある。
その笑顔に……というか頭についている耳がピコピコと動くその仕草に少しドキっとしてしまう。猫の獣人さんか……ちょっとした浮気心とは違うのだと思いつつも真理に軽く謝罪した。
野良猫を見て可愛いなって思う感覚なんだ。信じてほしい。
「今、鑑定するわね。どこでもいいからカードに押し当てて、そのまま登録しちゃうから」
「わかりました」
お姉さんはカウンターの下から、いつもの鑑定の魔道具を取り出して操作した。
すると人差し指を押し付けていたカードがうっすらと光る。
「コーガくんね。これで登録は完了よ。ランクはFからだからあまり危ない依頼は受けないでね。お姉さん怒られちゃうから」
「わかりました。それにしてもこんな感じで登録するんですね」
ネクサスでは最初に鑑定具で見られただけだったから疑問に思ってしまう。
「ふふん!凄いでしょ。まだ王都にしか支給されていない自動登録機能搭載の鑑定具なのよ。他の街じゃ鑑定してから機械にカードを通して登録するからね。凄いでしょ!」
「そうですね」
ドヤるお姉さんに一応乗っかっておいた。
しかし人が多い王都とは言え、審査が鑑定の魔道具頼みというのは適当だなと思うがそれが都合が良かったのも事実だ。これだけ偽装系の装備もあるのだから何かしらの対策があるかもしれない。そう思って警戒はしていたのだ。
俺は少しだけ緊張していた気持ちが緩む。
早速初めての依頼を受けるため掲示板に張り出された依頼書を物色する。
その際に受付のお姉さんの影に接触。意図に気づいたのか
そして掲示板をゆっくりと眺め、採取系の依頼をいくつか受けておく。帰ったら眷属たちに任せて良いだろう。そして討伐系の案件にターゲットを移し物色する。当然新たな眷属を増やすためだ。
何処かで誰かに迷惑をかけている厄介な魔物の討伐依頼であれば、俺が眷属にするのにはかなり都合が良いだろう。
唯一の問題は俺が新人冒険者を装ったことも事もあって、しきりに他の冒険者たちから声をかけられパーティに誘われてしまうことだ。眷属を増やすのであればソロでなければ意味が無いからな。
他の冒険者の前で魔物を手懐けるのを見せるわけにはいかない。
お誘いにひたすら断りを入れ、なんとか最初の討伐依頼に向かう事ができた俺は、依頼の目的地である東の小さな山村を目指して走っていた。背中にはいつものようにミーヤがいる。他の眷属たちはお留守番だ。
正直速さが150を超えたぐらいから魔狼であっても若干足手まといになってしまった。これでも俺の力が上がったことでその力も微力ながら眷属たちに流れているはずなので、魔狼の方も以前より素早くなっている。
だがそれ以上に俺が素早くなっているようなので、大した案件でなければ単独行動のほうが効率が良い。
眷属を好きな時に呼び出せるスキルなんかに目覚めないものか。できればそんなスキルがあれば嬉しいだと無い物ねだりしてしまう。
念のためギルドから一旦拠点に寄って、採取系の依頼書を並べて置いておいた。あまり期待していないがもしかしたら眷属たちが適当に依頼の品を採取してくれるかもしれない。そんな事を考えていた。
なだらかな山道を進むこと1時間程度、目的の小さな村が見えてきた。
一応その村に立ち寄るとその村の村長というじいさんに丁寧に御礼を言われた。まだ何もしていないのだが……
その厄介な魔物はさらに東の山から飛んできて、芋を掘りにやってくるという。ここらでその魔物は芋堀り鳥と呼ばれていた。芋はこの村の食料であり唯一の出荷物のためかなり迷惑しているのだと言う。
「芋掘り鳥なんて変な名前だな。魔物なんだよな?」
「んだ。魔物という事は分かってますだ。くちばしから小さくですが火なんぞ噴いたりするもんで。それで器用に芋を焼いたりして食べたりするだでな。目の前でそっただことやられたらこっちもムカッとするだでな!」
村長の怒りはかなり強いようだ。
「まったく腹の立つ鳥ですじゃ!この間もよ……」
「わかったわかった。じゃあ行ってくるから、終わったら報告するよ」
「頼んだでー!」
俺は村長の長くなりそうな話を遮って村長の指差した方角へと走ってゆく。
「ニャー(おそらく
「そうか。害鳥駆除ってあったがやっぱり魔物だった。こっちに来て正解だったようだな。じゃあ、さっさと行くか!」
俺はさらに速度を上げて岩山を登っていった。
足取りが軽い。
今俺は眷属たちからどれ程のボーナスが与えられているのだろうと思ってしまう。自称神に呼ばれた時にでも聞いてみるか。そんなことを考えている間にどうやら目的地に着いたようだ。
その芋掘り鳥、もとい
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