第6話 無事に帰還

 売れる物を売れるだけ売って経験値を獲得しステータスを上げた多佳晴はショッピングセンターの外に出た。


 経験値は店の商品を売ったおかげで十分に確保できている。低級ファントムを倒す必要はないのだが、戦闘の感覚をつかむために外に出た。


 現在の多佳晴の装備は顔に般若のお面、黒いマント+99、鉄の棒+99、その他にも店の物を勝手に売り払って得た経験値を使用して購入し強化した装備や、やはり勝手に売り払って得た経験値で購入したアイテムにより、装備もアイテムもかなり充実している。


「浄化薬のストックも十分だな。よし、これならしばらく経験値稼ぎができる」


 浄化薬とは侵蝕を押さえる薬のことだ。瓶に入った液体の薬を飲むことで侵蝕により灰色になった体を元に戻す効果がある。だが、使用していくごとに効果は薄れていくため、大体五本使用しすると効果はほとんどなくなってしまう。


 それでも時間は十分にある。成長のブレスレットの効果で経験値獲得量は四倍。素早さと攻撃力にステータスを極振りしていることで低級ファントムを倒すスピードも想像以上に速い。


 ただ紙装甲のためダメージを受けないように気を付ける必要はある。低級ファントムだからと言って油断していると痛い目を見るだろう。


 多佳晴はショッピングセンターの外に出ると次々と低級ファントムを倒していった。経験値を稼ぎ、ドロップアイテムを手に入れるためだ。

 

 低級ファントムからドロップするアイテムはたかが知れている。だが、それを売れば経験値になる。


 経験値は非常に重要だ。とにかく裏世界では経験値なのだ。


 狩って狩って狩りまくる。多佳晴は時間が許す限り低級ファントムを狩りまくった。


 そして、五本目の浄化薬を飲んだ頃、やっと動きを止めた。


「そろそろ限界か。帰るとしよう」


 多佳晴は移動しながらATMを探し始めた。運のいいことに近くにコンビニを見つけ、そこに入るとすぐさまATMに向かい、獲得した経験値をすべて使用してゼロにしてしまった。


「これでよし。帰るぞ」


 そう言うと多佳晴はロープを取り出した。


 脱出ロープ。これは経験値で購入できるアイテムの一つで、どこからでも裏世界から表世界へ戻ることができるアイテムだ。ただし、このロープを使うと所持している経験値が半分になってしまうというデメリットがある。

 

 だがしかし、多佳晴が現在所持している経験値はゼロだ。ゼロを半分にしようとゼロはゼロである。


 本来、脱出ロープは緊急時に脱出するためのアイテムだ。だが多佳晴はいつもこういう使い方をしている。彼にとっては緊急用脱出アイテムではなくいつでもどこでも帰ることができる便利アイテムなのだ。


 脱出ロープを使用して裏世界から脱出。こうして多佳晴の最初の裏世界が終了した。


「……朝、だな。ゲームの通りだ」


 目覚まし時計が鳴る。朝が来たことを報せている。


 ゲームでは夜中に裏世界に行った場合、脱出すると朝になる仕様だった。ここはゲームと同じようだ。


「さて、学校に行く準備でもするか」


 宿題は終わっている。あとは朝食と着替えを済ませて家を出るだけだ。


「帰ってきたら、昼寝でもしよう。夜に備えたて」


 また裏世界に潜る。帰って来たばかりだがすでにその気分だ。


 だが、ふと考える。危険を冒してまで裏世界に潜る必要はあるのか、と。


 多佳晴は考える。学校へ行く準備をしながら、いろいろと考えるのだった。

 

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