第164話 調味料て!

厨房の中はカオリさんの指示した通り、出汁を取っている鍋が湯気を出している。


「カオリさん、彼らは灰汁あくを取ってますかね、ただ弱火で煮ているだけですけど?」

プリンを食べてご機嫌な皆んなと雑談していたカオリさんが、鍋の方を向く。


「アイツら、本当に料理人なの!」

立ち上がり鍋に近づくカオリさん、中を見て顔が怒ってる。


「あなた達、この鍋は何!灰汁取りはどうしたのよ」

料理人達は顔を見合わせて、カオリさんに言う。


「弱火で煮とけと言われていたので、火加減を見ていただけです」

副料理長に言われて、頭を抱えるカオリさん。


「確かに言ったわよ、ただ灰汁取りは基本じゃないの副料理長」

考え込む副料理長さん。


「その〜何処の調理場でも、取ったことは有りません、食べ物から出るので食べられる物と思ってますし、伝えられてます」

カオリさんが鬼軍曹となった。


「よしそれなら、此処から考えを変えなさい!まずはお玉で灰汁を取りなさい」

汁物があるのか、お玉はある様だ。


「その上の泡みたいな物、それが灰汁よ!綺麗に取って煮ている物が見える様にしなさい、それとジャガイモの皮とにんじんの皮も剥いて置いて、後は料理長とか総料理長は此処にいるの?」


「いません、みなさま王城に残っています、火の一族の長老は誰も此処には居ません」

また考え込むカオリさん。


「なら此処にいる人達だけでも、腕を上げて貰います、そして料理の考えを変えないとね!」


俺の袖が引っ張られる、王女様達だ。


(旦那様、キャラメルはいつなの)

(此処で待っていて良いの、第1側妃怒っていない)

(うーん俺達には怒ってないけど、何かとばっちりが来そうだよね)


3人で話しをしていると、後ろから視線を感じる。


「あらー私が苦労しそうなのに、ダーリンは王女様達と愛を育んでよろしい事ね」

カオリさん、それは言い掛かりでしょう、普通に会話をいるだけですよ。


「はい、出せる調味料を出して下さいダーリン、あの人達に見せてこの厨房を変えないと」


またアイテムBOXをまさぐって、色々と出してみる。


味噌に醤油、胡椒にカレー粉、胡麻に胡麻油、サラダ油に天ぷら油。

ラー油に、七味唐辛子、トンカツソースに中濃ソース、ケチャップにマヨネーズ。

後は、チーズにバターにマーガリン、etc。


テーブルに一杯に出してあげると。


「2個以上有るのは、見本以外は閉まってね、全部出すと無くなって私達が困るから、それに冷蔵庫も無いしね」

確かに俺のアイテムBOXの中なら時間が停止していて、保存は出来るけど、此処にそのままでは腐る恐れがあるかも。


カオリさんは、小皿に各調味料を出して、料理人に味見をさせる。


「今舐めた物で、似ている物があるのなら此処に出して下さい!」

しかし誰も動かない、何故?


「お嬢さんに言いますが、似ている物とかは無いです、塩と砂糖しか此処には有りません」

「なら王都にはあるの?」

副料理長は直ぐに答えを言う。


「無いと断言出来ます、私は200年王城の厨房に居ますけど、一度たりとも見ていません」

愕然とするカオリさん、俺もそれを聞いて日本は良いなと思ったよ。








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