第78話 休日の夜は長い②

長い沈黙の後柳生(娘)さんは何かを喋った。

「………」


「何か言ったか娘よ!」

柳生(父)さんは聞き直す、すると柳生(娘)さんは声を出して喋り出す。


「分からないわよ! 彼は単なる中坊でしょう? 我々大人達が気にする事なの、子供の価値観なんて分からないわよ、たった一人を贔屓してやる意味がね!」


彼女は教師的な価値観からか、子供は平等と言っている様だけど、冒険者は実力が全てで上の者が下の者に頭を下げる事は無い。


「柳生さんの娘さん、名前はなんと言うのかね」

奏凪さんが質問する、柳生(父)が答える。

「チヨと言う、チヨその考えでは冒険者達と働く事は出来ないぞ、そこは軍隊と同じだからな! それも階級では無く運と力が全てなのだよ」


そうなのですよ!いくら強くても死んだら終わりで、稼がなくても同じ事。


生きて稼ぐ人が最終的に強者になるのが冒険者だ! サダ様はその日本人の3本の指に入り、この日本ではただ一人の覚醒者だ!


「奏凪さん、此処にいる新たは者達にも彼の事は教えるしか無いのでは無いか?」

柳生(父)さんは言ってくる、奏凪さんは考え中。


「すいません、先ほどから彼彼言ってますが誰なんです?」

千葉支部長安井さんが聞いてくる。


「和久井君、知ってもらって機密情報の文書にサインしてもらおう、それが得策だよ」

奏凪さんの言葉で和久井さんは話を始める。


「まず彼の名前はサダマサシ、中学生で十五歳です! 四月に冒険者と成り埼玉にあるダンジョンでは、主にゾンビとスライムのいる埼玉ショッピングセンター後のダンジョンが活動地域です。

まだ一ヶ月なので他のダンジョンには行ってませんが今回は初めて移動したみたいですね。

獲得賞金は純粋には二億円位ですが、色々有りましてゴールドランカーを越してプラチナランカーに手を届かせています」

初めて聞いた人たちは驚いているが、知ってる我々は頷くだけだ。


「待って下さい、初心者がそんなに稼げる物なんですか、精々ナン万円ぐらいでは?」

千葉支部長が聞いてくると、和久井さんが答える。


「まず一つ目ですが、彼はゴールドスライムの討伐方法を確立しました! それによりいつでもゴールドスライムを呼び出し討伐する事が出来ます、千葉のダンジョン長はその秘密を見てしまったんですね」

和久井さんが八木(妹)さんを見て尋ねると、八木(妹)さんが少し興奮しながら答える。


「そうですよ!まさかあんな方法があるなんて、でもそれって偶然だったんですよ、だって方法があるなんて思いませんもん」

自分は偶然で悪く無いとアピールする八木(妹)さん。


「だからといって、付けて行きその行動を覗くのはどうかと思いますよ!」

和久井さんが今度は、幕張メッセダンジョン長を見て言うと下を向いてしまった。


「それ位で彼を贔屓する意味は分かりません、ダンジョンに潜る冒険者ならその方法は知っているはずよね」

柳生(娘)の発言に皆んな首を振る。


「柳生(娘)君、ゴールドスライムは偶然に出ても誘導して出す方法は、過去を遡っても誰も発見してない方法だよ。

それに彼が出した最後の物は20k! 一つのダンジョンで一年間に取れる金塊の量も越している」

千葉の二人は驚いて固まっている。


「でもそれだけよね?」

再度和久井さんに問う柳生(娘)さん。


「柳生君、世界一の金鉱を探したのがそれだけで終わるはずはないんだよ、世界の金の価格が下がり経済混乱が始まる。今まで掘られた金の量はプール三杯分ほどだ、その量を一人で彼は何年かで達成するだろう!」


奏凪さんが経済効果の話をやんわり言って、サダ様の凄さを皆んなに広める、なら追い打ちをしないと。


「まだ有りますよ、ドロップ二つ出しとかね、それも恐らく彼は確立するでしょうね! 近い将来にはね」


「奏凪さん、ドロップ二個出してなんですか?気になりますね」


中立さんが奏凪さんに聞いてくる!






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