第2話 初めてのダンジョン

屋上に着いて車から降りる。


「入り口は、あそこで出口はさっきの下だからね、出口から出たらまた上に登らないと車で帰れないから覚えておいて、準備出来たら行くよ」


「少し待って、脛当てと肘当てをつけるから」


「要らないと思うよ、バットと消毒液があれば下まで行ける初心者ダンジョンだからね、あゝ後消臭剤かな」


そう此処のショッピングモール跡地にあるダンジョンは、スライムとゾンビだけが出るダンジョンだ!


スライムは物理攻撃。ゾンビは消毒液を霧吹きでかければ溶けて骨になって消える。


「ウーン、少し離れて歩いてくれる、仲間と思われたくない」


俺の格好を見て姉は言う、教室から出る時に渡されたサイズフリーの網目のチョッキ、背中には丸で囲われて初と描かれた黄色い文字が浮かんでいる。


「そんな事言っても俺は初心者だよ、何があるか分からないからこの格好なんだよ」

少し抗議気味に言ってみる。


「まあ行くよ、入場料は払うからゴールドスライム出たらよろしくね」


姉がお金を払って二人で建物に入って行く。

屋上の入り口からエスカレーターで下に向かうと、明るい空間に出る。


「さあて此処からは、魔物が出るからね、気合を入れなよ!」

「怪我はしないと思うけど、気を付けて歩くよ」


俺は姉の前を歩く、少し歩くとバスケットボール位の丸い物体が跳ねてこちらに来る。


「ほら来たよ、殴って潰せば魔石が残る、それを集めて下で精算だからね。

ただ色で価値が違うからね」


「それは何処で分かるの?」

「下の出口横の買い取り精算所に、今日の買い取り価格が貼ってある。

冒険者ならそれを見てから上に登って、討伐しながら下の出口に向かう。

帰りも精算したらすぐ帰れるからな」


「なんだよ、それなら教えてくれても良かったのに!」

「まあ何事も経験だ、ほらバットで叩け」


俺は思い切りバットを振り下げる。

プシュガキン地面にバットが当たって手が痺れる。


「痛え〜、地面コンクリートかよ」

「バカハハハ、此処はショッピングモール後だぞ、地面がコンクリートなのは当たり前だ、それよりも魔石を拾え何色だ?」


言われた通り魔石を拾う。

「えっ、・・・赤かな」


「まあ、五十円にはなるな、次見つけるぞ」

また俺を先頭で歩いて行く。


「あれ? あれはゾンビかな」

「ああ、人間のコスプレイヤーで無ければ魔物のゾンビだな。

消毒液を霧吹きでかけろ、ただ噛み付かれるなよ痛いから」


俺は近づいて霧吹きを何度かかける、すると肉が無くなりガイコツになる。


「最後までかけとけよ、復活しないけど、ダンジョン吸収が遅れるからな」


魔物は死ぬとダンジョンに吸収される、人間も同じだ!

上級ダンジョンでは死体は中々表に出る事は無い。


死亡者は居なくても行方不明の人はかなりいる。

それが数字のトリック、死者が出ない政府発表だ!


骨を見ていると少しずつ地面に潜る様に消えて行く。

残った魔石は白い。


「それはスライムよりは良い金額になる、ほら見てないで次が来るよ!」


姉に言われて前方を見るとまたスライムが跳ねてこちらに来る。

魔石を腰袋に詰めてバットを構える。


「今度は二匹チャチャとやってね」

また俺が攻撃担当かよと思いながらバットを振る。

一匹は潰したが、もお一匹がバットを伝わり俺の顔に向かって来る。


「うわぁ、姉さん助けて」

「そんなの腕を回して振り解きな!」


そんなの無理だよ、もう目の前。


俺のファーストキッスはスライムに奪われた。







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