粗品ハンター、狩乱
藤泉都理
粗品ハンター、狩乱
「くぅくっくっく。今日の獲物はここだ」
苔色のマントをはためかせ、紅色の縁の広い帽子を押さえた男は、キラリ、目を光らせた。
ぱーぱぱぱっぱ住宅展示場。
最新の一軒家を飛び込みで内見可能。
午前九時から午後三時まで。
それぞれの家に配置されているスタッフの案内後、内見者に粗品が贈与される。
「くぅくっくっく。ここの展示場はどんな粗品がもらえるのかね」
男の名は、
趣味、住宅の内見により贈与される粗品集め。
虹岩の狩猟及び研究の仕事を退職したのち、集めた粗品を展示するコレクターミュージアムを設立、運営したいとの夢を抱き、休日は粗品収集に勤しむ。
「いらっしゃいませ。お客様の担当をさせて頂きます
「ああ」
「ありがとうございます。案内が終わりましたら、ご自由に内見をお楽しみください」
「ああ」
「では、ご案内いたします」
「ああ」
ぺたりぺたり、きゅいんきゅいん。
ゴミ吸引機能搭載のスリッパを履いた狩乱は、スタッフの地響についていった。
適当に相槌を打ち、適当に質問すれば、あっという間に十五分は過ぎ去るというものだ。
(もう終了か。さてさて。粗品は何かねえ)
住宅展示場を後にして公園で腰を落ち着けた狩乱が、地響から受け取った粗品である、立派なドキャノ木箱のリボンを解いて中身を開くと。
「ぱーぱぱぱっぱ会社のマスコットキャラ、ドレミファドラゴンが印刷された花火缶、か。くぅくっくっく。どの会社も花火缶ばっかりだな。同じ粗品にしようって協定でも結んでやがるのかねえ」
「花火缶だっ!おっちゃん花火あげてよ!」
公園で遊んでいたドラゴンの子どもに嬉々とした目を向けられた狩乱はしかし、自分で取りに行きなと言って、ドラゴンの子どもに背を向けて歩き出した。
子どもは粗品をもらえないんだもん。
そう言われて、ドラゴンの子どもに火を噴かれるまで、あと、五秒。
粗品ハンター、狩乱 藤泉都理 @fujitori
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