第25話・魔導の理論極致
「その青い光を純魔力弾と言うの。まだどんなエネルギーなのか定義されていないエネルギー。さ、じゃあイメージして。弾が破けて飛んでいくのを……こっちにね」
フロールさんに言われて……。
「うん!」
僕はイメージする。その玉が破けて飛んでいくのを。すると光の玉に穴があいてそこから何かが流れ出す。その瞬間光の玉はフロールさんの方へと飛んだ。
「おっと、重い……」
そう言いながらもフロールさんはその光の玉を青い光を帯びた手でかき消した。
「すごい……」
魔法には本当に多彩な使い方がある。
「純魔力弾はエネルギーをそのままぶつけるの。これだと効率が悪いから、一部を一時的に質量に変換したりする。それが土魔法。ただ、これは鎧に阻まれちゃう。じゃあ、鎧を着ている人に効果的なのは? ぶつかった瞬間エネルギーが全部熱になって、鎧に焼いてもらうのは? 金属鎧に効果的! ただ、革鎧には効果が薄いから、土魔法がいい。ただ、私も使えないんだけど消滅魔法っていうのがあるの。正確に真逆の回転の土魔法同士をぶつけ合って魔力を消滅させる。すると、魔力から莫大なエネルギーを取り出せるらしいの! それをディスパレートル・ノヴァと言うの!」
なるほど、魔法は本当に奥が深い。しかし、屋内で僕は魔法を打ってしまった。それを、かき消してくれる師がいればこそだ。
「ねぇヘドル。あれできる?」
あの魔法をかき消したのが気になってヘドルに僕は尋ねる。
「わからん、あんな使い方はしたことがない……」
と、ヘドルは小声で答えてくれた。
「ふむ……ふむ……」
グラスはただ聞き入っていたが、不意に手元に二つの玉を作り出す。複雑に織り込まれた術式が、その周囲に回っている。
「まさかそれ……」
それを見てフロールさんは冷や汗を流した。
「ディスパレートル・ノヴァの材料?」
この英知の怪物は、僕の知らないうちにどこまで育つのか……。
「間違ってもぶつけちゃダメよ! それしたら、この建物ごと吹っ飛んじゃうから!」
流石にそんな大魔術師の大魔法みたいなのが起こるなんて思えない。でもフロールさんがいうのだ。
「承知した……」
そう言って、グラスはその二つの玉を消した。
その深刻さはフロールさんの冷や汗が物語っている。
「あなた一体魔導師レベルいくつよ……」
魔導師のレベルは戦闘によっても上がるが、理解によっても上がる。
「52になったそうだ」
それを、この英知の怪物は一を聞いて百も二百も理解してしまったようだ。
「もう、大魔導師じゃない! むしろ魔法教えてー!」
フロールさんは、それを聞いてへなへなと座り込んだ。
「でも、本当に理解するだけで上がるんだね! 僕もレベル2になったよ!」
流石にグラスほどではない。でも僕も話を聞いて理解するだけでレベルが上がったのだ。
「うん、そりゃね……。はい、グラスちゃん! ちょっと先生やってみて!」
そう言われ、グラスがさっきまでフロールさんのいたところに立たされる。
「では……まず、魔力とは未定義エネルギーである。それらにエネルギーそのエネルギーが何であるかを定義することによって大概の魔法は発動される。しかしこれで取り出せるのは魔力の百分の一のさらに百分の一以下だ……」
そして、グラスは魔法の講義を始めた。
「え? え?」
ただ、それは高度すぎて意味がわからなかったのである。いくらなんでも魔法を理解しすぎだ。
「ルウェリン……理解できないか?」
グラスからはションボリとしたような声の響きを感じた。
「あぁ、なるほどね……。魔法学者さんより魔法を理解してる……」
フロールさんはソファーに座って学生役に回って、頭を抱えていた。
「まぁ、習うより慣れろだ! まず、熱って言うのは微細な振動なんだ! 早い物がぶつかると痛いだろ? その痛いが、やけどなんだ!」
魔法について、僕たちに説明するのにちょうどいいのがヘドルだった。
「んー、つまり……えっと……あ、できた!」
それでも難しかったけど、僕は手元に火球を生成するのに成功した。
「そうだそうだ! よくやった! それが炎の魔法! そして、逆に熱を奪って露を集めて固めると氷の魔法だ! 振動を逆に奪うわけだ! だから氷魔法は効率がいい!」
ヘドルはいい先生だった。僕の横に座って、僕が魔法を作ると撫でてくれる。ちょっと恥ずかしいけど、褒められて悪い気はしない。
「なるほど、でも時間かかるね……」
僕は同じように氷の魔法を形成しようと試みるが、すぐにはできない。ちょっとづつ氷の粒が成長していく感じだ。
「でもできてるぞ! ほら、私も時間がかかるだろ? 氷魔法の欠点なんだ……」
効率がいいが時間のかかる氷魔法と、効率が悪いが一瞬で構成できる火魔法。なるほど、使い方がにも奥が深そうだ。
その使い方を学ぶことでも、魔法系ギフトは成長しているのだろう。と言うより、魔法系ギフトはまるで魔力だけ与えたあとは、魔法使いとしての戦闘力の指針になっているようだ。
「そうだ、だから魔法には経験が必要だ! だが、今日のところはよくやった!」
ヘドルが先生だと僕は甘えてしまいそうだ。
「なんかヘドルちゃんってお母さんみたいね……」
なんて、フロールさんに言われてしまうのだが……。
「私は子供好きだ!」
だから当然とばかりのヘドルであった。
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