第17話・反逆
そして、数日が過ぎた。僕は一つの依頼をずっと待っている。Cランク以上のゴブリン集落掃討戦だ。僕が行ける中では唯一ギフトを持つモンスターが存在する。特にゴブリンメイジが出ることを祈っている。
しかし、なかなか来ないものでその日は別の依頼だった。
「弟子を捕まえたつもりが、これじゃパーティーメンバーだな! ガハハハハ!」
と、ヴェルンドさんは豪快に笑いながら前をゆく。
そう、僕の扱いはほぼパーティーメンバーなのだ。弟子としての最後の期間にパーティーメンバーのように扱われる弟子は少なくない。それは弟子育成の成功を意味しているのだ。
「そうだね、まさかあれほど強いと思ってなかったからね……」
と、マチューさん。
その言葉で思い出されるのはこれまでの日々とゴブリン討伐戦だ。あの日から僕は報酬をパーティーで均等に割り振られて普通にCランク冒険者として活動している。
Cランク同士はパーティーを結成可能で、Cランクだけで結成されたパーティー四人以上でCⅠとなる。僕は実質ランクCⅡとされ僕がもう一ランク上がれば、僕込でBⅤランクに分類できるそうだ。俄然やる気が出てくる。
「今回は調査依頼だ。ゆっくり行こう……」
調査には斥候の力が役に立つ。現在このパーティーは斥候が二人居る状態だ。
発見と見識を備えるアンダさん。それから発見はできる僕と、推察能力の怪物であるグラスだ。
「右の獣道をたどろう……ここからは静かに」
突然グラスが言った。
グラスには僕らが見た痕跡を逐一報告している。また自分でも痕跡を発見し、どんどん森の全体を把握している。
「一応何がある?」
グラスは毎日ギルドで素材化、あるいは食用化できない廃棄物を食べている。もちろんその中には脳が多量に含まれる。つまり、その思考能力はもはや予知と見まごうレベルに到達していた。
発見能力が普通であるためそこまでは目立たないが、アンダさんと合わさることでもはや森の全てを見通す目になっている。
「オーガの集落、中規模。交友を試みれる可能性あり」
オーガ、それは僕からしたら最も今出会いたいでは相手であった。ただし、別の形や段階で……。オーガはゴブリンから二段階進化した状態であり。全てギフトを持つ。
しかし、これまでに見つけた痕跡からそこまでわかってしまうとは本当にグラスは異次元だ……。
「オーガの集落!? なら、ギルドに戻る必要があるよ!」
と、マチューさんは言う。リーダーなら当然の判断である。
オーガが存在する集落となるとCランクレイド、あるいはBⅠ以上のランクの仕事になる。
「否定……戦闘は不要である。論拠一、定住栽培型であり。文明を持つ可能性が高い。論拠二、ウルフ系とゴブリン系の足跡から家畜の存在を示唆する。以上から、文明化されている我々との衝突リスクを考えるに足る知能を保有する。推定、オーガは知能系ギフトを保有している可能性が高い。よって、意思疎通を試みることができる」
それは、僕たちがであっても危険ではないという根拠は示してした。だとしても、オーガが存在する規模のゴブリン集落はCランクでは手に余る。
Cランク冒険者の戦闘系ギフト冒険者二人以上でオーガ一匹と同等だ。
「だとしてももどるべきだ。Cランクレイドを組んで討伐する必要がある。その牙が人間に向かないとは限らない」
マチューさんの判断は正しい。だけど、ただ討伐するのはもったいないと思うのは僕がテイマーだからだろうか。
「論拠三、そこにオーガがいる。監視されている」
グラスが言うと、木陰からオーガにしては小柄な……。だけどオーガの特徴を備えた老爺が出てきた。
「知恵比べはワシの負けのようだ……」
その、オーガは言った。
「あなたは脅威だった。敵意があれば私たちは負けていた。防衛側、やはり有利」
攻め三倍の法則。冒険者の生存にも書かれていた。攻める側と守る側になった場合、攻める側は三倍の戦力を用意せよと。これは知能戦にも適応されるらしい、じゃなければグラスが負けるわけがない。
「いや何、我々も滅ぼされたくはない。お前さんたちの言語は理解したさ、これであっているだろ?」
ただ、その老爺も老爺で知恵の化物だったのである。少し監視がてらに聞いて言語を理解するほどの……。
「肯定……。言語理解力の凄まじさに敬意を……。さて、リーダーあちらは一人で出てきた。私が気づく以前に、相手は偵察していた。帰ってレイド結成は厳しい」
これは完全にこちらの負けだ。オーガの叡智系ギフトはこれが厄介なのだ。詰みの状態を作ってくる。人間でも同じ年数を生きる叡智系ギフトでないと太刀打ちできない。
「そう……だな。すまない……」
マチューさんは、剣を抜きかけた手を離した。
「さて、では交渉に移ろうと思う。何を求める?」
グラスは言った。
「そうさなぁ……当面の人質などどうだろう? 我が村が、貴国と同盟を結べるまでの大切な人質を……」
オーガは言う。ここで返してしまったらレイド結成に向かわれてしまう。そうならないために人質を要求しているのだ……。
「私が……」
と、フロールさんが行こうとしたが……。
「僕とグラスで事足りるかな? オーガさん、僕が一番新参だけど彼らは僕を愛してくれるんだよ。だから、どうかな?」
僕だったら殺されてもエイル・ダールジャンが元の形にもどるだけだ。だから彼らにとって僕が大事だと言うことをアピールしながら、僕がフロールさんを遮った。
師匠たちへの初めての反逆だ。
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