第16話・依頼達成報告

 ゴブリン達の死体は基本的に埋葬だが僕らは違った。そして特徴的なその耳を切り取ってギルドに持っていった。


「さて、冒険者の生存は文字通り生存の話しか書いてない。そこで、冒険者内でのことだ。ゴブリンは基本的に楽な仕事だよ。帰りの持ち物が少ないからね。後ろについているから達成報告をしてみよう!」


 マチューさんはそう言って、僕の腰につけているゴブリンの耳が入った袋を指さした。


「うん!」


 僕はそういい受付へと向かうのだが……。


「ルウェリンならできる!」

「え!? グラスそっち!?」


 そう、グラスも僕の師匠パーティーのような顔をしていたら、黙っていられるはずもないのだ。


「お前さんもそっちだ!」


 と、ヴェルンドさんに言われてグラスは渋々僕のとなりへ来た。

 冒険者ギルドのカウンターは高い。僕だと、首から上だけがカウンターの上に出る感じだ。


「お帰りなさい。確か、エイル・ダールジャンのお弟子さんですね? 本日はゴブリン集落でしたか? 討伐証明部位をこちらにどうぞ!」


 そう言われて、僕は腰に下げた袋をカウンターに置く。これが何でできているのかは知らないけど、中身の匂いがもれなくて本当に重宝する。


「うん! これだよ!」


 冒険者は敬語を使わない。その流儀に則り、僕は敬語を常に抑えている。


「ふふっ、ここでは敬語使ってもいいんですよ!」


 その無理が、受付嬢さんにはバレてしまったようだった。


「そ、そうなんですか?」


 僕はそういうことで遠慮なく敬語を使う。


「冒険者同士の間で敬語を使うと、司令塔をになっている人がバレやすい。だから、冒険者同士は敬語を使ってはいけないっていうのもあるんです。それになれるために、エイル・ダールジャンには敬語禁止ですね!」


 そう言いながら受付嬢さんは微笑んでいた。

 でも同時に、僕の渡した袋を開け、器具を使ってその中からゴブリンの耳を取り出していた。


 ゴブリンも僕たちと同じ生物だ。赤い血が流れている。それは鉄臭い血の匂いがする。だから、直接触らないように受付嬢は口に布をつけて直接触らないように作業をした。他の冒険者たちにとっても受付嬢は美しくいなくてはいけないからだ。


「そういうことだったんですね……」


 そんなやりとりの間も受付嬢さんは仕事をこなしている。


「はい! あれ? 耳が綺麗ですね? なにか特殊な血抜きでもしましたか?」


 ゴブリンの討伐の際は耳袋と言われる袋が渡される。普通その中に血が少しくらい滴るものだ。


「グラスが血を食べてくれたので……」


 もちろん血だけではない脳を含む耳以外もグラスは食べた。

 ついでに今回のことでグラスのテイマーレベルは3まで上がったらしい。スキルは僕と全部同じだ。


「なるほど、綺麗なのは助かります」


 そう言いながら、受付嬢さんは口の布を外した。


「次回からもグラスに血を食べてもらいますね!」


 そうすると、受付嬢さんが助かると言うならどうせグラスも食べたがるしそれでいいのだ。


「それは助かります。さて、ゴブリン7匹。通常のゴブリン集落ですね。では、集落跡に解体作業員を向かわせますね」


 ゴブリンの集落は潰して終わりではない。集落には建築物もたっていて、それを解体して木の種を植えて早く森に戻さなくてはならないのだ。そこは、本当は冒険者の駆け出しの仕事なのだが、師匠が居ない駆け出しに取って置く仕事だ。


「はい!」


 でも、これで以来達成……となると当然報奨金が出る。


「では報酬ですが、依頼金が250ダカット。国政助成金が250ダカット合わせて500ダカットですが、全て銀貨がいいでしょうか?」


 その報酬額に僕は驚いてしまった。パンの金額が2~3ダカット。これが銅貨で払うものだ。しかし500ダカットとなるとそれがいくら買えてしまうのか。


「そ、そんなにですか?」


 なんて業務外のことを行ってしまう僕にも受付嬢さんは優しかった。


「初めての冒険ですもんね、驚きますよね。冒険者は命懸けだし、装備も必要なのでこれでも生活は困窮するんですよ……。それで、銀貨にしますか? 金貨は市場だとあまり出回りませんから……」


 エイル・ダールジャンが僕にお金の価値をいろいろと教えてくれた。だから、そこらへんのことは一応知ってした。

 でも孤児院で餌暮らしだった僕からすると、それはとてもたくさんのお金に思えた。豪華な家に住めなくてもお腹いっぱいにはなれる。それは僕には贅沢に思えるのだ。


「は、はい! 銀貨でお願いします」


 と、僕が言うと、受付嬢さんは机の下で銀貨を数えて、トレーで僕の目の前に出す。


「数えながら財布に入れてくださいね! 銀貨が全部で50枚あるはずです」


 その後、僕は受付嬢さんと一緒に数えながら一まいづつ財布に銀貨をしまった。

 この財布は、フォレストケイロウの革で作られたもので、あの時に狩ったものだ。僕にとって思い出の財布である。


「はい、確かに銀貨50枚ありました」


 銀貨が10ダカット、銅貨が1ダカット。今回使わなかった金貨が、100ダカットだ。


「はい、こちらでも確認しました! では、依頼お疲れ様でした。これにて、以来達成報告完了です!」


 と、受付嬢さんが言ってくれたのでラクラクだったのだがその後エイル・ダールジャンが出てきたのである。


「正直この二人、ルウェリンとグラスの実力は少なく見積もってDⅠに達していると思う。今後も規定通り半年見るけど、半年になっちゃいそうだよ」


 と、マチューさんは受付嬢さんに報告した。


「そうですか……。本当に才能のある子だったんですね!」


 僕はここから半年で、可能な限りをエイル・ダールジャンから学ばなければいけない。それは大変なで私生活になるだろうことを予感させた。

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