第6話・ルウェリンとグラス
数日はサバットラビットの狩猟を主にしていたが五つ目のスキルが芽生えた。
五つ目のスキルはこうだ。
スキル名:ギフトツリー共有
効果:ギフトツリーを相互に共有することができるようになる。ただし、共有されたギフトツリーは初期状態である。
僕はその効果に驚いてしまった。そして、グラスに言われたのだ。
『なんかテイマーのギフトもらった!』
「多分、テイムが使えるんだよ……」
『?』
もうちょっと頭のいい従魔を最初に選べば良かったかもしれない。ただ、スライムの知能は上がるらしいのでグラスは今後に期待だ。
そもそもテイマーのギフトツリーは珍しいらしい。こんな強烈なスキルがあるって知ってたら誰だって鍛えただろう。
だってグラスは僕のテイムを使えて、グラスのテイマーがレベル5に到達したらグラスが従魔を扱えるようになる。芋づる式だ。それにステータスは一部が相互共有されるしその芋づるが長くなれば長くなるほど無限に強くなれる。
なんだ、テイマーは全然無能じゃないじゃないか……。
「まぁとにかく、フォレストケイロウの討伐に行こう!」
そう草食獣としての二番目の難敵は、フォレストケイロウ。オスは頭に枝角を持つ中型の草食動物だ。これを家畜化したものを鹿と呼ぶが、野生下では十分人を殺す可能性を持つ獣だ。
サバットラビットに関しては人間を殺害した報告はなかったため、冒険者はそこから始めるのだ。僕も冒険者気分を満喫したい。
『頭! 脳!』
僕がテイムしたのは本当にスライムなのだろうか……。なんかもっとそう言うえぐい生物なのではないのだろうか……。
見た目は可愛いのに脳ミソ大好きで怖い……。
「まぁ、サバットラビットより頭大きいよ……」
とはいえ、ゴブリンには及ばないのだが……。
ゴブリンは戦闘あたりの脳ミソ収量を考えた場合最高なのである。
『脳ー』
蕩けた声で脳と言わないで欲しい。怖くなっちゃう……。
「さて、確か。フォレストケイロウは、超初級を脱する最初の関門である。その痕跡はヒヅメの跡と、円筒の土塊である……」
冒険者の生存、第二章冒険を始める君への一部である。だから、僕は下を見ながら移動をしていた。
『脳ー』
グラスはそれしか言わなくなっていた。フォレストケイロウの脳がよっぽど食べたいらしい。僕も肉が美味しいと聞くから食べたいところだ。それに肉の収量もこれで上がる。
肉ばっかり食べてるけど、孤児院の時の餌より美味しいから僕は万々歳だ。
「あ、土塊……ええっと。それは、フォレストケイロウの糞である。って触っちゃったよ! ばっち!」
そらで思い出せるくらいには何度も読み返したけど、頭の中で記憶をこねくり回さないと思い出せない。
しかし、冒険者ギルドには絶対置いて有りそうなくらいいい本だ。森のことがなんでも書いてあるし、本に沿って冒険すると凄く安全だと思う。だって僕は生きているんだから。
『?』
僕がしなだれているのをグラスはそっと見つめていた。
「えっと、フォレストケイロウを見つけたければ土塊を見つけた獣道を見失わないことだ重要だ……。だったかな……」
恥ずかしい思いをした。勝手な恨みかもしれないが、この獣道は絶対に見失わない。獣道の主に恨みが出来たところだ。ウンチを触ってしまったのだ。
『主……?』
しかし、グラスもかなち頭が良くなったものだ。
「主っていうのもなんかなぁ……名前、そうだ名前だ! 僕は森で生きてる! だったら自分に自分で名前をつけてもいいよね! グラス!」
グラスが呼びかけてくれたおかげで僕はその発想に至れた。少し嬉しい気持ちになる。グラスは本当に僕が従魔にできる唯一の存在だったかもしれないが、その出会いが運命だったように思えるんだ。
『名前! 肯定!』
しかしである、グラスには名前をつけるくせに自分には名前を付けないなんてとんだ怠慢だ。
「うーん……そうだ、ルウェリンにしよう! 僕の憧れた生き方だ! みんなの先頭に立つかっこいい男の名前さ!」
ルウェリンは古い言葉でリーダーや雄弁という意味が有る。中でもリーダーだ。僕はリーダーのように行きたい。それにグラスを導くリーダーなのだすでに。
『主、ルウェリン!』
僕はグラスをヒョイと肩に乗っけた。
「そう、ルウェリン! 僕があのまま生きてたら絶対名乗れなかった名前!」
孤児なんて、自分の所有者に名前をあたえられるのがせいぜいだ。ヘタをしたら与えてもらえないなんてことだっていくらでもある。ましてやルウェリンなんて呼んでもらえるはずがない。
『グラスとルウェリン!』
なんて、グラスが言うから僕はついつい嬉しくなってしまう。
「ルウェリンとグラス! ずっと友達だよ!」
テイムとは言ってもこのスキルはコミニュケーションを円滑にするくらいの効果しかない。支配のような力はなくて、だから僕にはスライムな友達が出来た。
『うん!』
いっぱいいっぱい寿命を伸ばして、僕が死ぬくらいまでは一緒にいてもらわなきゃ。
でも……。
「あ、この獣道の主に気づかれてないかな……」
今は追跡中だった。だから僕は慌てて声を潜めたのである。
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