25
次の日。ぼくは朝の通学路で、いつもの三人に出会わなかった。だからとうぜん、荷物持ちもさせられない。
遅刻をせずに時間通りに三年一組の教室につく。奇跡のような朝である。連続遅刻記録は十二でストップ。
いつも通りのチャイムが鳴った。ホームルームが始まると、野田先生が教室にきた。立ち歩いていたクラスメートが、みんな自分の席につく。明るい春の日、教室には空席がひとつ。一番うしろのゴウの席だ。
「みんな、立石のことは知ってるか?」
教壇に立った野田先生が言った。その声がひどくまじめなものだったので、クラスのみんなはほんの一瞬ざわついて、そしてすぐに静かになった。
「ゴウになにかあったの? 先生」
最初に言葉を発したのは、ゴウの親友スナオだった。
「立石は」
野田先生は静かに言う。
「今、昏睡状態にあるらしい」
誰かが勢いよく立ちあがる音がした。ぼくはそちらに目を向けた。
ミヅカさんだった。
教室の中央付近で、顔を青ざめ立ちつくしている。
野田先生は話を続けた。
「今朝、立石の親御さんから連絡があった。呼吸はしているが目を覚まさないそうだ。これから病院に連れていくと言っていたから、詳しいことはまだわからない」
クラス中がざわついた。不安が不安を伝染させて、それが重い空気となって場を沈める。
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