24

 夜になって、一日ぶりの夢を見た。


 いつもと同じ、あの夢だ。


 ぼくがこの夢を見るということは、領域がどこかに存在しているということだ。


 その日のぼくは、荒れていた。


 とにもかくにも機嫌が悪い。悪魔がいるなら、見つけしだい、けちょんけちょんにのしてやる。ストレス発散の対象にしてやるんだ。


 それもこれも、すべてゴウが悪いんだ。ぼくのだいじなブーツを奪うから、ぼくの機嫌が悪くなる。こっちの世界で暴れまわりたくなっちゃう。不純な動機なんて言わないでくれ。ヒーローだって人間だ。それくらいさせてくれてもいいだろう?


 ぼくは暴れる気まんまんで、いつものように街のパトロールに出かけた。


 領域はどこだ? どこにある?


 街のあちこちに目をこらす。


 毎日、鞄持ちをさせられている道を歩く。


 すると。


 あった。


 領域が。


 そこはスーパーの裏手に隣接してる平屋づくりの一軒家。わりと古風な家である。


 人のいない夜中の街なみで、その部分だけ景色が歪んでぼやけている。家全体に黒いもやがかかっていた。


 まさか、と思った。


 表札には『立石』と書いてある。


「はあ」


 やっぱりだ。ここはゴウの家である。


「けっ!」


 やってられるか。ぼくは景色の歪んだゴウの家の壁を蹴飛ばし、その場を離れた。


 いくら悪魔をけちょんけちょんにのしたいなんて思っていても、あのむかつくゴウを助けるつもりはさらさらない。どう考えてもぼくのなかの天秤はそういう方にかたむくのだ。


 ストレスの発散ができないのはしゃくだけど、これもすベてゴウがまねいた結果なのだ。あいつは、ぼくをいじめて楽しむという悪い心を持っていたから、そこに悪魔がつけこんだ。そんなやつを助ける義理はどこにもない。


 ぼくはもやもやする気持ちをかかえたまま、もときた道を戻って帰った。


 ぼくの背後の領域は解消されていない。ゴウの家に黒いもやはかかったまま。なかにいる悪魔を倒してないからとうぜんだ。


 部屋に戻って朝になるのをひたすら待った。

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