20
「あー、美味しかった」
母の手料理を平らげると、デザートのケーキが運ばれた。
八号ホールのショートケーキ。プレートにはHAPPY BIRTHDAYの文字。
ロウソクが十五本ささっている。火をつけながら母さんがうたった。
「ハッピー・バースデー・トゥ・ユー……」
語学が堪能で翻訳家の仕事をしている母さんは英語の発音が綺麗だ。ノリノリすぎて恥ずかしいけど、これも一種の親孝行である。
歌が終わるとふーっとひと息。ロウソクの火を消した。
「おめでとう」
母さんはひとり息子の成長を、心の底から喜んでいるようだった。
「さあ、食べよう」
ぼくがフォークをかまえると、母さんが言う。
「あ、ちょっと待ってね」
テーブルの下から大きな箱をとり出した。包装紙に赤いリボンがかかっている。
「はい。これ」
そう言って押しつけられる。いつものくせで反射で受け取る。
「なにこれ?」
「誕生日プレゼント」
思わぬサプライズだ。
「わーい。やったー」
わくわくしながら包装紙をびりびりにやぶいて開けた。やけに年季が入っている包装紙はうっすらと黄ばんでいて裂けるというより割れていった。
「あっ」
中身を見て驚いた。白と赤で色わけされたブーツの箱だ。
レッドウイング。2268。ブラックレザーのエンジニアブーツだ。
「これ、死んだ父さんからのプレゼントなんだよ」
ずしりと思いブーツを手にとって、まじまじと見ているぼくに母さんが言った。
なんで十年以上前に死んだ父さんが、十五歳の今のぼくにプレゼントなんか用意できるんだ? ちんぷんかんぷん。意味がぜんぜんわからない。母さんは、なつかしそうに昔話を始めた。
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