19

 夕方。予想通り、とくにいいこともなく、いつも通りに学校が終わった。


 ぐったりして帰宅すると、母さんがキッチンにこもって料理をしている。きっと集中してるのだろう。そういえば、ご馳走を作ってくれるって言ってたっけ。


 ぼくは学校の荷物をおくために二階にあがった。自分の部屋のドアを開ける。瞬間、さわやかな風が吹き抜けた。


「ほえ?」


 びっくりした。いつも汚いぼくの四畳半が綺麗に片づいている。床に散らばった雑誌類は綺麗に本棚に収められ、机のうえもプリント類が整理されてぴかぴかだった。おまけに窓も綺麗。フローリングも磨かれてワックスまでかけてある。


 母さんがやったんだ。


 母のやさしさに、ぼくはじーんとした。


 母さんは忙しい仕事のあいまをぬって、わざわざ部屋の掃除をしてくれたんだ。今日がぼくの誕生日だから。


 変わり映えのない嫌な一日をすごしたあとなので、そのやさしさが身に染みた。


 よし。今日はしっかり親孝行でもしよう。なにか手伝うことがあるか聞いてみようかな。


 そんなことを考えながら、部屋を出てリビングに向かう。テーブルにはすでにずらりと料理が並んでいた。


「あ、メイヤ、帰ってたの。おかえり」


 母さんがようやくぼくの存在に気づいたみたいだ。リビングと続きになってるキッチンから、エプロン姿で出てきて言った。


「ちょっと早いけど、メイヤも帰ってきたことだし、晩ごはんにしちゃおうか」


「うんうん」


 ぼくは縦に首を振る。はい。そうします。やさしい母さん。


 今日はなんでも言うことを聞きます。


 浮かれたぼくは、終始にこにこ食事をした。

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