14
領域のなかは、ぼくがよく知る景色だった。
変わり映えのない、闇の世界で黒一色。
そのなかのはるか下方に触手のバケモノのくすんだピンク色が見える。
悪魔のサイズはかわいいものだ。きっとまだ、エネルギーの吸収がじゅうぶんではないのだろう。成長の段階は初期の初期という感じ。
悪魔の本体は円錐台……だっけ? ゼリーを皿に盛ったときのような形状だ。
高さがおよそ二メートル前後、横幅もだいたいそれくらい。
目、鼻、口なんかのパーツがないので、頭がどこで身体がどこかはわからない。だから、のっぺりしたフラットな頂点が頭で、ピンクの触手が生えているのが身体だと思うようにしている。
そんな悪魔は、本体から伸びているピンクの触手がうねるように蠢いている。これはぼくが知る限りの、一般的な悪魔のサイズと形状だ。
「さて……」
悪魔の身体にざっと視線を走らせる。寄生されている人間は誰だ? 男か女か、それとも子どもか?
じっくり見ると悪魔の身体の底面に小学生のガキの姿があった。
「はあ……」
こいつはたしか小三か小四で、ユウトとかっていう名前。ぼくに挨拶さえしないクソ生意気なクソガキだ。
「あーあ」
一気にやる気がなくなってしまう。
こいつはぼくを自分以下の人間として見てるのだ。おまけに意地の悪さと口の悪さはスナオの百倍。そんなユウトの顔が悪魔の身体に押し潰されて苦しそうに歪んでいた。
「はあ」
嫌だけど。
放っておきたいけど。
しかたない。
これがぼくのやるべきことだ。
「変身っ!」
ぼくの身体のまわりを白い光がおおった。同時に右手からユメ・ブレードを発現させる。
そして。
「そこまでだっ!」
大声で叫び、はるか下の悪魔に向かって歩を進めた。
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