7

 数時間後。保健室から教室に向かう。頭のうえではキンコンカンコン、チャイムが鳴っている。すでに帰りのホームルームは終わった時間だ。


 ぼくはあのまま保健室に運ばれた。そして今までベッドに倒れてさぼっていた。


 教室に戻る廊下の途中で、野田先生にばったり会って呼び止められた。


「内藤、大丈夫か? 体育の授業中に頭を打って倒れたんだってな」


 まあ、ダメといったらダメなのだが、それでもまあ、ベッドのなかで授業をさぼろうと思った程度の怪我しかしてない。


 べつに心配はないので、適当に答えておいた。


「まあ、頑丈だけがとりえですから」


「そうか。それならいいんだが」


 野田先生はそう言って安心した笑顔になる。


 この先生は、ぼくやゴウやスナオのことを叩いて怒ったりするけど、基本的には生徒思いのいい先生なのだ。


「じゃあ、ぼくはこれで……」


 立ち去ろうとすると呼び止められる。


「内藤。今から実力テストの答案を返却するぞ。みんなはもうとっくに受け取っているが、おまえは今の今まで保健室にいたからな。代わりにおれが各教科の先生方からあずかっておいた」


 そう言ってプリントの束をぼくに突き出す。


「うげっ」


 これはついこのまえ、三年生になったときに行われた、今までの総復習的なテストの結果だ。


「いやあ、ぼく、今、ちょっと頭が痛くて……」


 そんなのべつに返してくれなくていいのに。そんなニュアンスで誤魔化そうとする。五教科の点数だとかテストの結果だとかは、見なくてもおおかた予想はついている。


「ほら」


 野田先生がプリントをさらに突き出す。


「早く受け取れ!」


「は、はい!」


 反射的に手を出して受け取ってしまう。


 結果を見たくなかったので、くしゃくしゃにまるめて鞄のなかに押しこんだ。点数は見えなかったが、たくさんある赤いばつ印が目に入った。


「それにしても、内藤……」


 あきれた声で先生が言う。


「その点数はなんだ。このテストは二年生までの復習なんだから、特別な勉強をしなくても、そこそこの点数がとれるようにできてるんだぞ。教科書通りの基礎問題しか出てないし、学年平均だって70点前後だというのに。おまえときたら……」


「ぼくの点数、そんなに悪かったですか?」


 結果を見てないので点数が10点なのか12点なのかわからない。


「バカタレ! 10点だろうが12点だろうが、普通の定期テストだったら全教科赤点だぞ。いいか、内藤。いつまでもそんな成績をとっていたらなあ……」


 うーん。前言撤回。


 この先生、ぜんぜんいい人なんかじゃない。


 やっぱり怖いばっかりだ。

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