5

 キンコンカンコン。ホームルーム終了のチャイムが鳴る。大量の荷物をかかえたぼくは、ようやく三年一組の教室に到着した。


「うええ。疲れた」


 へろへろになりながら教室のドアを開ける。


 目のまえに担任の野田のだ先生が立っていた。


「げっ」


 この人は五十代の男の人で、いい人だけれど昔ながらの熱血気質。口うるさくて、なにかにつけてすぐ怒る。


「また遅刻だぞ、内藤明夜。これで十日連続。記録更新だ」


 そう言って出席簿で頭を叩く。


「痛っ!」


「あはははははは……」


 教室で笑いが起こる。


「こら! おまえたちも笑ってるんじゃない! 一時間目は体育だろ。さっさと着がえて校庭に行くようにっ!」


 怒声を飛ばす野田先生の真横から、ゴウがひょっこり現れた。


「そうだぞ、メイヤ。くるのがおせーんだよ。さっさとおれのジャージ返せよな」


 反対側からスナオも出てくる。


「そうだ、そうだ。おまえのせいで、おれたちまで授業に遅れたらどうするんだよ」


「おい、おまえたち!」


 野田先生は左右から現れたゴウとスナオをぎろりとにらんだ。


「もしかして、また内藤に荷物を持たせていたのか?」


「え、い、いや、その……」


 ゴウがどもる。


「それは……」


 スナオの目が宙を泳ぐ。


「バカモーン!」


 野田先生が声を張る。


「自分の荷物は自分で持ってこーい!」


 出席簿でふたりの頭を強めに叩いた。


「うぎゃっ」


「痛ってえ」


 でかいゴウとちびのスナオは両手で頭をかかえてる。


「あはははははは」


 ふたたびクラスで笑い声が爆発した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る