3


 ゴウの言った「ちょうどよかった」のセリフの中身はこういうものだ。


「今日は体育があるし荷物も多いから、ひとりじゃ持ちきれなくてな。ちょうどスナオと二人で困ってたところなんだ。だから……」


 ほらよと言って、ゴウは鞄と体操着入りの紙袋を無防備なこちらの胸に押しつける。


「え……ちょっと……」


「うちの学校って、毎日、教科書を持ち帰らなきゃいけないから大変でさ……」


 そう言いながらスナオも荷物をこちらに押しつける。


「え、こ、これって、もしかして……」


「早く受け取れよ!」


 二人の声がばっちりハモる。


「は、はい!」


 いつものくせで二人の荷物を受け取ってしまう。


「じゃあ、よろしくなー」


 手ぶらになったゴウはたかたかと歩いていく。


「落とすんじゃねーぞ、へぼメイヤ」


 そう言ってスナオもあとについていく。手には、三人ぶんの荷物が残った。


「おーい! メイヤ、早くしろよー。遅刻したら承知しねーぞー」


 100メートルくらい先にいるゴウが振り返って叫んだ。


 その横ではスナオも意地の悪い笑いをしている。


「(まったく、これくらい自分で持てよな、非力ヤロー)」


 はっきりと口に出す勇気はないので、心のなかで毒づいた。


 声には出していないので二人にはまったく聞こえていない。


 そう……


 かしこいあんたは、もうおわかりだろう?


 光の剣ユメ・ブレードを自由自在に振りまわし、夢の世界で悪魔を倒すヒーローの『おれ』は、現実世界じゃただの落ちこぼれで、いじめられっこの『ぼく』なのだ。

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