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ゴウの言った「ちょうどよかった」のセリフの中身はこういうものだ。
「今日は体育があるし荷物も多いから、ひとりじゃ持ちきれなくてな。ちょうどスナオと二人で困ってたところなんだ。だから……」
ほらよと言って、ゴウは鞄と体操着入りの紙袋を無防備なこちらの胸に押しつける。
「え……ちょっと……」
「うちの学校って、毎日、教科書を持ち帰らなきゃいけないから大変でさ……」
そう言いながらスナオも荷物をこちらに押しつける。
「え、こ、これって、もしかして……」
「早く受け取れよ!」
二人の声がばっちりハモる。
「は、はい!」
いつものくせで二人の荷物を受け取ってしまう。
「じゃあ、よろしくなー」
手ぶらになったゴウはたかたかと歩いていく。
「落とすんじゃねーぞ、へぼメイヤ」
そう言ってスナオもあとについていく。手には、三人ぶんの荷物が残った。
「おーい! メイヤ、早くしろよー。遅刻したら承知しねーぞー」
100メートルくらい先にいるゴウが振り返って叫んだ。
その横ではスナオも意地の悪い笑いをしている。
「(まったく、これくらい自分で持てよな、非力ヤロー)」
はっきりと口に出す勇気はないので、心のなかで毒づいた。
声には出していないので二人にはまったく聞こえていない。
そう……
かしこいあんたは、もうおわかりだろう?
光の剣ユメ・ブレードを自由自在に振りまわし、夢の世界で悪魔を倒すヒーローの『おれ』は、現実世界じゃただの落ちこぼれで、いじめられっこの『ぼく』なのだ。
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