バクマン

1

「起きろー。明夜メイヤー」


 朝。耳元で母さんの声が聞こえる。


「朝だよー。メイヤー。遅刻するぞー。起きろー」


 あー、もう、うるさいなあ……


「メイヤー。起きろー」


 あともうちょっと……


「メイヤー……」


 うーん……


「まったくあんたは! いいかげんにしなさいっ!」


 母さんの怒号が脳天まで突き刺さったかと思うと、布団をはがされ手首をつかまれる。


「おりゃあ!」


 腕を引かれ無理やり起こされベッドに座らされた。


「うー……」


 暴力的な人嫌い。


「まったく! なんであんたは、毎朝まいあさこうなのよ!」


 寝ぼけた頭にがんがんと、母さんの小言が響く。ああ、もううるさい。古代インドのカースト制度。わが家には、母さんをピラミッドの頂点とした絶対的な階級社会が根づいている。


「ほら! さっさと顔洗って、朝ごはん食べて学校に行くっ!」


 尻を蹴られ、飛びあがる。ふらふら立って母さんに言われた通りに行動する。


「メイヤ! シャキっとしなさい。あんたは、もうすぐ十五歳になるんでしょ!」


 なんだよ。今は年齢としは関係ないだろう?


「ふぁーあ」


 反射であくびが出る。


「バカみたいなあくびをしない!」


 あー、もううるさいな。なにをしても怒られる。


 それにしても……


 カーテンのすきまから家にこぼれる朝日がまぶしい。


「はあ」


 四月の朝は、どこまでも眠い。


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