第11話 プラム・ガロウクと女教師

プラムは威力試験が終わり、疲労した筋肉を労っていた。


その頃、プラムの試験を担当した教師は、非常に焦っていた。




「あああ、、まずいまずいまずい、私が彼に全力を指示したことがバレたら、魔法局に殺される、、、」




実はあの壁、国家財産である。壊れない前提の試験なのだ。


魔法局とは、この国の最高司法機関、そして唯一、この国で恐れられている組織である。


というのも、この国で罪を犯せば魔法局に3日以内に発見され捕まる、と噂されるほど、魔法エリート集団の塊だからである。




、、ああ、、、興味本位だったんだ、、、彼の、、、ちゃんとした魔法はいかほどなのかと気になって、、、


それでつい、、、全力を指示してしまったぁぁ!隠蔽せねば、、、




彼女はそう、入学試験の補助官、エリス・フィストルだった。残念系の美人である。


彼女にとって、、、威力こそパワーなのだ。身体強化魔法使いとしては、プラムに感じる物があったのだろう。




「プラム・ガロウク!後で私の部屋に来るように!」


「は、はい!」




、、、後。



、、僕はワクワクしていた。


あんな綺麗な先生に、部屋に来るように言われ、何が起こってしまうのだろう、、、と。


艶っぽい想像力を働かせ、布一枚まであと少し、、、



「おい、何ニヤニヤしてるんだ?」


「は、はひっ」


、、なんと情けない声だろうか。


さっきまでの妄想は一瞬にして消し飛び、残ったのは怪訝な顔のみ。



「一つ、聞きたいことがある。お前の神から与えられた魔法はなんだ?」



、、言うか言うまいか。言ってしまえば楽になる、が自らの異常性に気付かれてしまう。


ここで嘘を吐けば、いつかボロが出る。、、、どうすべきか。




「僕の魔法は、、、治癒魔法です」


「なるほどな。だから私の目で見ても魔法を使った形跡がないのか」



そう言いながら、短剣を取り出し、


ブシュッ


手の平を切り付けた。



「ななな、何してるんですか?!!」


、、せっかくの綺麗で美しい御手が、、、




そこかよ。





「おいプラム、これを治してみろ」



、、やはりそうなるよな、、、だけど、



「できません」



しばらくの沈黙。


血の落ちる音のみが響く。



「何故だ?治癒魔法は他人を治す魔法のはずだが」



、、言うか、、、



「僕の治癒魔法は、、自分しか治せないんです」


、、ある都合上で。


他の人を治して、自分が死んでは元も子もない、でしょ?



「そうか。すまなかったな、無理を言って。」



懐から赤い液体の入った瓶を取り出す。


キュポンッ


トクトクトク、、、


傷の入った手が、液体によって治っていく。



ポタッ、、ポタッ


残るのは静寂と、液体が床とぶつかる音。



「もし」


「私と同じ質問をされたら、」


「身体強化魔法と言いなさい。」



「そして明日からこの私が、君に身体強化魔法を教えよう!!!うん。異論はないな?」


「、、、、」



、、困惑。突然のハイテンションについていけない。



「そうかそうか!嬉しいか!!」


「それじゃあ、壁を壊したことは黙っててくれよっ!」


「はひっ、はい!」


、、何か、とても大事なことをさらっと約束してしまった気がする。






プラムにとってよくわからない女教師でも、


エリス・フィストルにとっては大切な隠蔽工作なのだ。

しょうもな。



そしてこの日から、プラム・ガロウクがエリス・フィストルの身体強化魔法の授業の三人目の生徒となった。

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