第6話 杖?とはなんだ?
おじいちゃんに杖をプレゼントしてもらった後、僕と母さんは剣を買いに武器屋に向かって歩いている。その間にプレゼントの箱から杖を出したが、どうやら僕が握らないと球体に戻るみたいだ。とりあえず上着の内ポケットに入れておく。
しばらくすると、矛と盾のマークの看板が見えてきた。だいたいの武器屋がこのマークらしいけど、それは魔王軍が由来だとか違うとか。
二人一緒に中に入る。
「すみませーん、店主さんいらっしゃいますかー?」
店の奥から、金属を叩く音が響いている。何度か繰り返すがうるさすぎて聞こえてないらしく、金属音が響き続ける。
申し訳無いと思いつつ店の奥を覗いてみると、店主のガタイの良いおっちゃんも気付いたらしく、金槌を止めてこっちを向いてくれた。
「おう、お客さんかい?今行くからちっと待っててくれ」
5分後ぐらいにおっちゃんが奥から出てきた。
「今日はなんのご用で?って、ガラージの奥さんじゃねえか。それにこいつは、、、あいつの子供か?」
「プラムですよ」
母さんが答える。
僕は正直言ってこの人の威圧感に負けそうで、僕と同じなのか杖もプルプルしている。とりあえず母さんが話してる間に周りの武器たちを見回すと、重そうな大剣や糸のような細剣、盾も様々で僕も知らない様な金属の塊が沢山置いてある。
僕も不安だからプルプルしてる杖(球体)を懐から取り出して、握ってみるとあら不思議、球体から杖に早変わり。なんちゃってね。
「おいプラム、気に入った剣はあったか?」
突然後ろから声をかけられ、驚いて咄嗟に目の前にあった普通の剣を手に取る。
「お、そいつは普通の鉄じゃあなくてだな、魔鉄っていう魔力が馴染みやすい鉄でな、鉄の三分の一しか取れないんだ。ちっとお値段は高いが学園に行くならあった方が便利なはずだ。今日なら安くするけど買うか?買う?」
「か、母さん、どうすべきかな」
バリバリの営業トークに圧倒され、親に助けを求める始末。非常に恥ずかしい。
「おいワードス、うちの子がびびってるんだけど?」
ビクッとなるワードスさん、うちの母さんには敵わないね。
「えっと、、、この魔鉄の剣はどうでしょうか、プラムさん、」
だいぶ柔らかくなった気がするのは、元々の性格は丁寧だからだろう。多分この人は良い人で、さっきのはいつもの営業スタイルなんだろうと思う。母さんとも仲良さそうだし。
「ありがとうワードスさん、おすすめは他にある?」
「そうだね、学園に行くなら、魔鉄の武器をおすすめするかなぁ」
「でもプラム君は筋肉ありそうだから、中型から大型の武器がいいと思う。小型だと活かしきれないかもだね」
「なるほど」
「プラム君は武器を使ったことある?」
「ないです」
「じゃ、今君が持っているのが最適解だね」
「じゃあ母さん、これにするよ」
「ワードスさんもありがとうね。」
ワードスさんも嬉しそうに見える。僕的にはワードスさんの丁寧な方が好きだ。多分次からは優しくしてくれるだろう。
買い物も終わって、家へ歩いて帰る。今は杖は懐の中だ。街中で出してたら危ない人だからね。でもずっと懐で杖がモゾモゾしてるのが非常に気になる。
しばらく歩いて家に着くと、兄さんが、
「プラムの部屋で買い物開けててくれよ、見に行きたいからさ」
兄さんも興味津々だ。それもそうだろう。
兄さんは学園には行ってないから、剣には触れたことがない。森ゴブリンの時は剣を持つのは父さんだった。
「僕はお腹減ったよ、先にご飯にしようよ」
ってことで今日の夕ご飯はニンニクパスタとポトフ、あと僕はプロテイン。
みんなより早く食べ終わったから、部屋に入って開封していると、兄さんも入ってきた。
「、、、この赤い球体はなんだ?」
やっぱり兄さんは初めに気付いたか。さてどう説明しようか悩ましい。
正直に言って信じてもらえるか、それとも疑われるか。僕は正直にぶちまけたいけど、僕の杖(球体)なんて他に見たことがない。
「これはね、杖なんだ。僕専用のね。」
なんかかっこよく決まったのはどうでもよくて、それよりも兄さんの反応が気になる。
どうにも納得してなさそうだから杖を握って兄さんに見せると、
「うわぁー、そういう風になっちゃうんだ、あの球が、金属っぽいのに。」
どうやら納得してくれた様子を見て安心したけど、なぜか引いてる。この杖はこういう仕様なのにね。
「じゃあ、これが買ってきた剣か。あ、ワードスさんのところの剣じゃないか!」
「魔鉄の剣なんだって、便利って言ってたよ」
「そりゃそうだよなんてったって魔鉄は魔力が流れる鉄かつワードスさんのところは丁寧に打ってあり、、、、」
兄さんの話すこと15分。
実は兄さんは武器オタクである。杖には興味がないけど。
逆に僕は杖オタク。杖は見ただけで材質もわかっちゃうのは僕の自慢で、ちなみに兄さんの杖は水晶と水竜の鱗を砕いて練り合わせたもの。水魔法使いの人がよく使っている種の杖だけど、中の鱗の破片に光が当たって青色と水色が見る角度によって変わるから非常に神秘的だ。杖にはいろんな種類があって、その人の魔力の質と神様が与えた魔法の組み合わせ、あとは性格とか色々な要素で適した杖が決まる。兄さんの場合魔力が水魔法寄りで、水魔法使いだから他の水魔法使いより水竜の鱗の量が多い。兄さんと同じ種の杖でも鱗が地竜のものだったり、量が違うのも少なくない。つまり杖はみんな違うから、見てて飽きないのだ。
「もう遅いし寝るね兄さん。」
「おうプラムおやすみ」
相変わらず杖はもぞもぞしたままだった。可愛い。
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