第5話 はじめてのおつかい!

昨日の今日で今日は学園に行くための準備の日。


学園では剣や魔法の扱い方、訓練、あとは国のルールが学べる。国立学校で唯一強くなれるのがトリーカン王国立学園だ。他の学校では武術は教えてもらえない。だいたい政治だとか研究だとか庶民に関係ないことばっかやってる。貴族向けだろう。


「プラムもう起きなさいねー!」


「ふぁーい」


「今日は買い物だからねー!」


「わかってるって、、、」


ベッドから起き上がって冷たい床を歩いてゆく。


ばしゃっ、ばしゃっ、


次は歯磨き。


「ご飯できてるよー」


今日の朝ごはんはハムエッグとパン、そしてプロテイン。朝からタンパク質を多く摂るように心がけるといいらしい。魔王軍情報だ。


僕の家は王都の東に隣接する町にある。王都に近いから人通りも多く、賑やかなのが特徴だ。この街には杖屋と、防具屋、武器屋が全部揃ってる。



今日揃えるのは剣と杖だけだから防具屋には用はないけど、実は僕が防具屋に行ってみたい。杖屋は兄さんが魔法を与えられた時に行ったし、武器屋はこの前の森ゴブリンの大発生のせいで買い替えた。だけど防具屋にだけ行ったことがないのだ。


「プラム、ぼーっとしてないで杖屋着いたわよ?」


「ごめんごめん」



杖が必要なのは魔法を使うためなのだが、僕の場合治癒魔法では無い。


神様は個人に魔法を与えると共に、人間全員が使える魔法も与えた。


しかし人間は直接与えられた魔法以外を使うには杖がないとコントロール出来ないのだ。



店に入ると、見た目そっくりのおじいが3人。


一人は腰が曲がっていて、

もう一人は杖のお手入れ。

ラスト一人はせっせと探し物をしている。


だけど、実はこれは幻想魔法。この店の店主は奥にいる。


「おーい奥にいるミセルおじいーー!」


これが正解。


「ほいほーい」


どうやら嬉しいらしい。母さんとミセルおじいちゃんは親戚だから、久しぶりに会えてのことだろう。


「おープラムもおっきくなったじゃないかい!」


もっと嬉しそうだ。


「ありがとう、おじいちゃん」


「ほっほほ」


喜んでる。


「それで、なんの用じゃい?」


「実は僕がやっと神様から魔法を与えられて、学園に行くことになったんです」


「何魔法じゃ」


「治癒魔法、、です」


「なに、それはめでたいのう、、、」


考えるおじいちゃん。


「うむ、ではおじいちゃんからプレゼントを受け取って欲しいのじゃが、、、」


「それは、、、?」


「ズバリ杖じゃよ」


「杖屋じゃからな」


イタズラが成功した子供みたいな笑い方してる。つられてこっちも笑顔になる。


「それじゃプラムに合った杖を探すから、ここに立って、治癒魔法を使ってくれ。」


やっぱりこの温かい感覚は癖になりそうだ。例えるなら、湯船に使った感じ。あとは運動後のプロテイン。


プロテインって言うのは、魔王軍が飲んでた飲み物に薬草を入れてタンパク質摂取と疲労回復がどっちも出来る飲み物。他の人はあんまり飲もうとしない(美味しくないらしい)けど、僕は風呂上がりのプロテインと朝のプロテイン、プロテイン後のプロテインを飲んで毎日健康だ。




様々な形の杖が僕に向かってきては一周して離れていく。たまに二周目三周目する杖が出てきて、僕の周りを五つの杖が舞っている。


真っ直ぐな木製の杖や、節のある金属の杖、木と金属が半々の杖もある。白色の木を水晶が覆っている杖と、青色の金属の持ち手が鱗で見えなくなっている杖にはすごく興味がある。

なにせ、かっこいいし神秘的だ。男の子なら尚更欲しくなる。


「このぐらいじゃろうな」


そうおじいちゃんが呟いた時、店の奥から何かが暴れている様な音がする。




おじいちゃんが慌てて奥の部屋のドアを開けると、おじいちゃんの頭の上を何かが高速で通り過ぎて、僕の目の前でピタリと停止する。


それは熱々の鉄の様な赤い金属の球体の?杖?かどうかはわからないけど、他の杖より僕に何か言いたげなのはわかる。



つい、おじいちゃんの方を向くと、顔から汗が滴るぐらいダラダラしてる。ついでに口からもダラダラしてる。何かは言わないが。



「、、、なんか僕、やっちゃいましたか?」


はっとするおじいちゃん。


「プラム、それをとりあえず握ってみなさい」


おじいちゃんがいつになく真剣な表情になって言う。ダラダラしたまま。


握る。


手の中でウネウネし始めたからしっかりぎゅっと握る。


逃げ道を求めるみたいにだんだん棒状になってきて、動かなくなった。


「それがその杖のプラムの為の姿じゃ」



、、、杖から手を離すと、杖に僕の握り跡が付いていた。



「、、、その杖は、ここ何十年も誰も使い手が居なかった種の杖じゃ。しかしその杖が金属であり、赤ということから考えると、、、熱を持った金属、つまりは火の系統。また鉄は熱いうちに打てと言うようにその杖は形が変わるかもしれん。その杖がプラムを選んだということは、プラムにその杖が一番合っている証じゃろう」


さすがおじいちゃん。


「プラムはどうしたいかの?一応他の杖も試しとくか?」



、、、僕はどうすべきか。何度も杖を握り直す。その度に僕の手に合うようにまた変形する。

なぜか僕はこの杖を可愛い奴だと思った。せっかく僕に合わせてくれるなら、僕も嬉しいからね。


「、、いや、僕はこの杖にきめ」


「よしおじいちゃん了解じゃ。うんうん、良い選択じゃ」


僕が言い終わる前におじいちゃんが早口で被せてきた。多分だけど、おじいちゃんもこの杖の扱いに困ってたんだろう。最初の約束通り、おじいちゃんはあの杖をプレゼントしてくれた。


その時に、


「プラムは、、、脳筋なんじゃな」


みたいなことを呟いていたけど、僕は脳筋じゃないし、ほとんど聞き間違いだろう。おじいちゃんはサムズアップで僕を見送ってくれた。

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