第18話 敗者独奏


私は...残念だがあの子を。

双海を応援することは出来ない...というか。

そんな権限はない。


だけど私は応援することは出来ないが...彼女は元から強い。

私なんかが居なくても大丈夫だ。

そう思いながら私は服を選んであげた。


「...海」

「...何。双海」

「有難う。選んでくれて」

「私のセンスだけどね」


そう言いながら私は双海を見た。

双海は嬉しそうな顔を浮かべてから私が選んだ服の入ったビニール袋を胸に抱えながら歩く。

そんな姿を見ながら私は笑みを浮かべていると「海」と言ってきた。

私は「?」を浮かべて双海を見る。

指を差していた。


「ゲームセンター?」

「プリクラとか撮ろう」

「...私は良いよ。...双海だけで...」

「何それ?1人って全く楽しくないよ」

「...私が写ったら邪魔でしょう」

「...昔だったら邪魔だった」


双海はそう言う。

それから私を見てくる。

私は「?」をもう一度浮かべてから双海を見る。

すると双海は私の袖を引っ張った。

ずるずるプリクラの室内に運ばれる。


「海。人差し指と...親指をクロスして」

「...?...何で?」

「私達女子高生の間ではキュンという意味。...愛とかって意味」

「いいよ。私は。普通通り撮るから」

「良いから。して」

「...わ、分かったよ」


そして私達は写真を撮る。

それから私達は表に出てからプリクラの印刷を待っていると「あれ?」と声がして私はビクッなる。


それは...飯田。

飯田健司(いいだけんじ)だったからだ。

私の恋人だった人物だ。

制服姿で居るという事は帰りか。


「何?知り合い?」

「いや。元カノだな」


3人ぐらいの女子と男子にそう説明する健司。

私はその言葉をしている健司に「何でここに」と聞いた。

すると「いや何でってここは公共施設だぞ」と健司は言う。

そうしていると「...海の彼氏さんだったって事ですね」と双海が顔を上げた。


「海がお世話になりました」

「...ああ。もしかして双海さんってやつ?」

「そうですけど」

「君も大変だね。双海さん。...色々と。この人の噂知ってるしね」

「...停学の意味ですか」

「そーそー。本当に最低だよね」


笑う健司。

私はその言葉に何も言えなくなる。

それから健司は畳みかける様に「お前の様な暴力な女は要らないよ」と言う。

周りも笑っていた。


「...犯罪じゃん。何でお前プリクラとか撮ってんの?」

「確かにね。犯罪だよ。...だけど...」

「停学中だろ。ついでに。...お前最低だな」

「...」


何も言えなくなる。

すると双海が私の手を握った。

それからその場をさっさと後にする。

落ち込んでいる私を連れてだ。

健司は「じゃあなー」と爆笑しながら見送ってきた。


「あんなに最低なのと付き合っていたの。海は」

「...あんな奴だって思わなかったけどね」

「海。まあいずれにせよ...停学中だから。それは事実だしね。...帰ろうか」

「そうだね」


そして私達はそのまま帰宅する。

するとお父さんが居た。

私を見てから目線を逸らすお父さん。

それからさっさと奥に行ってしまった。


「...嫌われているね」

「...じゃなくて何も言えないんじゃないかな」

「まあどっちにせよ私は死んでいる身分だしね」

「そんな事は無いけど」


私はその言葉に苦笑しながら画材を持って上がる。

その際に双海が「ねえ」と聞いてきた。

私は振り返る。

それから双海は「...絵をどっかのコンテストに応募しない?」と言ってくる。

私は「!」となってから双海を見た。


「...私はそんな気は無いから」

「だけど勿体無い」

「...勿体無くないよ。これで良いんだ。私は」

「...」

「貴方は貴方の事だけ考えれば良い。私は死んでいる身分」


言いながら私は画材を持って上がった。

それから私はドアを閉めてからまたキャンバスに向く。

「何を描こうか」と呟きながら私は...キャンバスに向くが。

さっきの健司の言葉が頭を過った。


「...私は死ぬべき人間だろうけどね」


そう呟きながら私は苦笑する。

それからその場で膝を曲げてから座った。

調子に乗り過ぎた。

そんな事を思いながら私は膝を見てから涙を浮かべる。


「...今の私にはもう絵しかない。...なら頑張らないとな」


そんな事を言いながら私は動かない膝を動かしてから筆を握る。

ようやっとなんか力が湧いた。

取り敢えず描いてみよう。

そう考えるが足が竦んでいる。


「...はは。まあ天罰だから」


そう言いながら私はキャンバスに向く。

後で100枚の反省文も書かないといけないから趣味につぎ込んでいる時間があまりない。

だけど何か描いてみたい。

思いつつ私は筆をぶらんとしている手から上げてから描き始める。



勿体無いとは思う。

あの絵を誰も知らないなんて。

そう思えるが海がそう言うなら私は何も言わない。

考えながら私はデートプランを考えたり...絵の本を見たりした。

そして勉強もする。


「...筆の音がするって事はまた描いているんだな」


私はそう思いながら右の壁を見る。

それから耳を澄ませる。

するとガシガシと乱暴な筆使いがする。

私は「ふむ」と呟きながらそのまま壁から耳を離した。


「...でも連日描いているけど」


そんな事をまた呟きながら壁を見る。

どうなんだろう。

無理をしている気がするが。

まあ...私の身体じゃ無いからどうあれ構わないのだが。


「...」


私はさっき会った嫌味な野郎を思い出す。

というかまあ海が悪いんだけど...だけど嫌味だな。

そう思いながら嫌気を覚えつつ私は壁から離れてから...溜息を吐いた。

そして考え込んだ。

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