第14話 信頼度0
☆
私自身は絶対にお姉ちゃんを許せない。
こんな状態だろうがどんな状態だろうが。
というかお姉ちゃんを許すにも許せない状態にも陥っている。
曖昧な複雑な感情が...私を支配する。
お姉ちゃんはもがいている様だが...でもそれを表に出してまた裏切るんじゃないかって思っている。
だから暫くは様子見という感じだろう。
そう...思いながら。
私は早速家に帰ってから2階に上がりお姉ちゃんの部屋のドアの前に立つ。
そして私は右手を上げた。
それからコンコンと部屋のドアをノックをしてみる。
すると数秒してから「何」と声がした。
「...お姉ちゃん。今何をしているの」
「...私が何をしていても関係無いでしょ。双海に」
「ある。私はお姉ちゃんを様子見している。悪い事をしてないか。だから私は知る権利がある」
「今回の件で家族にも呆れられたしね。...まあ自業自得だけど」
「...」
私は考えてみた。
それから「開けても良い?」と聞いてみる。
そのまま数秒間沈黙が流れ数秒後にゆっくりドアが開く。
そこに猫柄のエプロンをしているお姉ちゃんが居た。
アクリルガッシュとか色々な香りがする。
それですぐ察した。
「また絵を描いていたの?」
「まあね...」
「...そう」
「...ねえ。双海」
「何」
「私は...この先どう生きたら良いかな」
そう難しい事を聞かれた。
私は言葉に顎に手を添えて考え込む。
それから真剣な顔をしてからお姉ちゃんを見据える。
そして溜息を思いっきり吐いた。
「...お姉ちゃんなりに生きたら良いと思う。だけどあくまで今までの事でお姉ちゃんはこれから先も悪い事をしないとは限らないから。...私はお姉ちゃんをたまに監視する」
「それで良いよ。私はそんな人間だしね」
「これはきっとお姉ちゃんの過去が影響はしていると思う。だけど過去がどうであれ私はお姉ちゃんを許さない」
「...」
「先ず私の気持ちを考えてよ」
私は拳を握り締める。
それからお姉ちゃんを見据えた。
お姉ちゃんは「...そうだね」とだけ返事をしてから気力も無い感じで歩く。
部屋の奥に行ってしまった。
「...何を描いているの」
「...ゲル○カの模写だね」
「...」
「...でもそのうち飽きると思うから」
「そう」
私は部屋の奥に行く。
そこには確かにパ〇ロ・ピカ〇の模写があった。
キャンバスにそっくりそのまま描かれている。
呆れる程に似ていた。
流石は私の憧れた人だ。
こういうのは得意過ぎて不気味だ。
印刷かと思った。
「...モ○とか選ばないの」
「...ゴッ〇もピカ〇も私の人生に似ているから」
「確かに似ているけどね。せめて自分をアゲアゲにするものを描きなよ」
「...私はこれでしか生きられない」
そう言いながらお姉ちゃんは筆を握る。
それからまた描き始める。
私はその姿を見守りながら椅子に腰掛けた。
ドレッサーの椅子に腰掛けて膝で頬杖をつく。
「...それで。話ってのはそれ」
「...話っていうのはこれからの未来の話」
「私に未来は必要無いから」
「それでも貴方は生きている。それだけで未来は要るから」
「無いよ。...私は今を生きる事が最優先だから」
「...そう」
私はアクリルガッシュを叩きつける様に描くお姉ちゃんを見る。
頬も腕も足もみんなアクリルガッシュがくっ付いている。
私はその熱意な姿を見ながら目線を横に向ける。
そこには写真立てが並んでいる。
「ねえ。お姉ちゃん」
「...何」
「私達はもこれからは姉妹関係を辞めよう」
「...何で」
「このまま姉妹関係を続けていても貴方が苦しいだけでしょう。お姉ちゃん」
「...じゃあどうするの。私達の関係」
「...友人同士でいかない?」
驚愕しながらお姉ちゃんは筆を下ろして私を見てくる。
私はその姿に「私はこれからはお姉ちゃんを海って呼ぶ。だからお姉ちゃんはそのままで呼んで」と話しながら立ち上がる。
海はその言葉に目線を窓に向ける。
「...そうだね。姉妹同士の関係があったから何かが狂ったしね」
「そう。だから姉妹じゃなくて友人か親しい家族って事で」
「...双海はぶっ飛んでいるね」
「私は常に私の利益しか考えてない。...それだけ」
「ハハハ。...信頼度0だね。私」
「当たり前でしょう。何をしたか知っているの」
「本来なら話し掛けたくも無いんだよ」と怒りを伝えながら海を見る。
すると海はアクリルガッシュの付いたパレットを置き。
そして筆を置いてから「...そうだね」と返事をした。
やる気の無い様な感じで。
燃え尽きた様な感じでぶらんとしながらだ。
「暫くは絶対に許せないし監視も続く。だから悪い事を絶対にしないで」
「アハハ。まさに年上と年下の立場逆転だね」
「...当たり前でしょう。これ本来なら海が全ての責任を負うべきだしね」
「...分かった」
「...」
私は燃え尽きたボクサーの様に項垂れる海を見てからそのままドレッサーの前から踵を返す。
そしてドアのドアノブに手を添えてから私はもう一度だけ海を見た。
それからこの言葉を告げる。
「絵はきっと貴方を救う」
「...?」
「...だから祈りを込めて絵を描くのを辞めない事」
「...そうだね」
そして海はゆっくりと立ち上がってから私の目を見据えた。
海はそのうちに私から目線を逸らしてからそのまま踵を返して絵をまた描き始めながら集中し始める。
私はその姿を見てからそのままゆっくりドアを閉めた。
そうしてから唇を噛んでからそのまま自室に戻る。
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