絵という魂
第11話 絵
☆
部屋にこもってから数時間が経過した。
それから私はヨロヨロという感じでベッドから起き上がる。
そして私は涙を拭う。
このままではダメであろう。
何とか対策をうちたいが。
何も浮かばないしもう死んでも良い気がする。
私は反省するべきか。
それとも...。
「...何をしているんだろう。私」
そんな事を呟きながら私は窓から外を見る。
夜になった空に...満月が浮かんでいた。
私はその景色を見ながら目線を横に向ける。
そこには写真立てが並んでいる。
その写真の1枚。
それは...亡くなった父親の写真だ。
性格には私が殺した父親の。
「...」
実は私しか知らない真実がある。
事務所に入って来た闇バイトの強盗に襲われて父親は頭を殴られて死んだ。
社長だったのがアダになった様だ。
私はその時に強盗に立ち向かえば...良かったのかもしれない。
1人だったからどうにかなったのかもしれない。
だけど父親から逃げてしまった。
そのまま父親は殺された。
自責の念がある。
「...まあだからと言ってそんな事を言ってもね。言いわけにしかならない」
そう呟きながら私は自嘲する。
そして殺害される前の父親との記念撮影をした写真を見る。
父親が生きていれば。
こんな事にならなかったのか?
「...私は...どうしたら良いのか」
そんな事を呟きながら私は父親と母親との写真を見る。
母親が再婚すると言った時は酷く驚いたが。
何故再婚するかと聞くと母親は「貴方の為だから」と言った。
私は驚きながらその言葉に納得して母親は再婚した。
「...」
絵を描いていたのだが父親が殺害される現場を見てから全く筆が進まない。
それはそうだろうけど。
そもそも描いた所でどうなるのかという感じだ。
だから描けないと思う。
だけどそのストレス発散法が浮気ではどうしようもないのだろう。
そう気が付いた。
私は思いながら奥の棚からパレット、アクリルガッシュ、筆などなどを取り出す。
それからキャンバスを立てかけてから殴り描きをする。
するとドアが開いた。
「?」
「...お姉ちゃん?何の音?ガシガシって音。呼び掛けても反応が無い...」
そこまで言ってから双海は驚愕してから寄って来る。
「また描き始めたの?絵を?」という感じでだ。
私はキャンバスに向く。
そこには大きな花瓶が割れた様な姿が映し出されている。
とても繊細かつ丁寧な絵。
下手すると賞が取れそうだが...。
気が付くと私もアクリルガッシュ塗れだった。
「...まさかこれコンテ...下書き無し?」
「...ゴメン。ノック音。気が付かなかったよ。夢中で絵を描いていたから」
「そう。こういう事でストレスを発散すればよかったのに」
「...そうだね。まあお姉ちゃん失格だね」
「...正直、私はこういうお姉ちゃんの筆遣いが好き」
「え?」
私は頬にくっ付いているアクリルガッシュを布で拭く。
それから私は双海を見る。
双海は「だけど今のお姉ちゃんは嫌いだけど」と目線を横にする。
私は頷いた。
「...凄いね」
「...何が。私は何も凄くない。ただ適当に描いただけだから」
「その才能は私にはない。...IQに幾ら金を突っ込んでも無理だし」
「...簡単だよ。こんなの。自由に心の中を描けば良いだけだし」
「それはね。お姉ちゃん。誰でも出来る訳じゃないよ」
「...そうかな。私はそうは思わないけど」
そう言いながら私はキャンバスを捨てようとする。
だがその手を双海が止める。
「待って。捨てるの?」という感じでだ。
私は「これがあってもどうしようもないでしょう」と言う。
「なら私が貰う」
「...貰うって。どうするの」
「飾るに決まっているでしょう。...むしろどうするのってそれしかないでしょ」
「...双海。それは...」
「お姉ちゃんに断る権限はないよ。だって浮気しているし」
双海はそう話しながらキャンバスを私の手から奪う。
それから絵を見つめる双海。
私はその姿を見ながら「そんなゴミの絵なんか捨てるよ」と言うが。
双海は「捨てない」と強情を張る。
「綺麗な絵は捨てないし」
「...でも浮気している相手が描いた絵だし」
「...絵には浄化の心がある」
「...?」
「絵には国境を反映しない。そうでしょ」
「...確かにそうだけど」
そう言いながら私は双海が持って行く絵を見る。
双海は「お姉ちゃん。先ずは着替えて。お風呂入ったら」と言う。
私は「そうだね」と返事をしながらそのままお風呂に入ってから夜中を迎える。
そうこうしているうちだった。
☆
「お姉ちゃん」
「...今度は何。双海」
「私は絵を描きたいから教えて」
「...私なんかに教わっても」
「浮気の件があるよ」
「いや。分からんでも無いけど私に教わっても」
そう言いながら私は突然部屋にやって来た双海を見る。
双海は「お姉ちゃん。今こそやるべき。そういう事はね」と向いてくる。
私はその言葉に壁を見る。
そして双海は「ピカ〇の絵ぐらいのレベルだって思う。お姉ちゃんの絵は。悪い事ばかりしなかったら最高」と言葉を発した。
「...私は勝てないから。お姉ちゃんに教わりたい。下書き無しであの割れた花瓶の繊細な絵を描けない」
「...」
「私はお姉ちゃんだからこそ教わりたい」
「...そう」
私はそう言いながら胸の辺りに手を添える。
何だろうかこの高鳴りは。
何だか身が軽くなった。
これが...私が得るべきだった本当の幸せだったのか?
そんな事を思いながら私は双海を見た。
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