第7話 ゴミ以下の問題


お姉ちゃんが破滅した。

というのも破産せざるを得なかった、と言える。

正直言ってその全てが自業自得の範囲だ。

何故なら自分で自分を殺したようなものだ。


それもこの全てに至るまでを婚約者に相談もしないで自らで全てを勝手に決め破滅していった愚か者だ。

その訳はお姉ちゃんが話したが(いやそれで?)という感じだ。

たったそれだけで許されると思ったのか。

思いながら私はスマホで洋二さんとメッセージをやり取りしていた。

お姉ちゃんの件について全てのやり取りを。


(お姉ちゃんは別れるって言われて大人しく去ると思いますか)

(消えるか消えないかにせよ俺は絶対に許さないけどな。...海の両親にもこの事実を全て告げる。知っているかもしれないけど)

(まあそうなれば破滅ですね。...まあ知ったこっちゃないですが)

(どうあれ俺は信じたかったけどな)

(...そうですね。お姉ちゃんには多少なり期待していました)


佐伯小五郎(さえきこごろう)がうるさいだろうな。

そう思いながら私は考え込む。

佐伯小五郎とは私の義父に当たる。

私はその事を思いながら洋二さんにメッセージを送る。


(お姉ちゃんは仕返しとかしないですかね)

(そんな根性も無いと思う、が。...ああ。そうだ。双海は今何処に居るんだ?)

(私は校門に居ます)

(じゃあ行くから)


それから私達は合流してから歩き出す。

数歩ほど歩いてから洋二さんが切り出した。

「俺は期待し過ぎていたんだな」という感じでだ。

私は「?」を浮かべる。


「...何でこうなったんだろうな」

「確かに私の家では殺人鬼の息子扱いになっています。洋二さんの事は。だけどそれは良い訳でありまして。何の説得にもならないです」

「...そうだな。俺は関係ないな」

「そうですね。...あくまでお姉ちゃんがコンティニューなどの選択肢をミスったとしか思えません」


私達は歩きながら人込みの中を突き進む。

すると洋二さんが「その。有難うな」と言ってくる。

私は顔を上げた。

それからニヤッとする。


「何ですかぁ?急に感謝して」

「お前にはいきなりキスをされたり散々だったが」

「はいはい」

「...だけどお前は良い奴だよ」

「じゃあ付き合ってくれますか?」

「それは無理だ」


私はありゃりゃと言いながら苦笑い。

それから真剣な顔をする洋二さんを見る。

「俺はアイツの許嫁だった身分ではあるからまあ最後まで面倒とか見るつもりは無いが行動を観察する」と話す。

優しすぎる。


「お姉ちゃんにそんなに期待しても何も出て来ませんよ。埃しか出てきません」

「...これは期待じゃないよ。あくまで。...あの女の行動を観察するだけだ」

「...だとしても洋二さんは優しすぎますねぇ」

「そうか?俺は優しすぎるかな」

「ですね。あんなお姉ちゃんに」

「...」

「まあお姉ちゃんはゴミ屑に成り下がってしまったので正直...行動を観察するのは確かに僅かながら利益は得るかもですね。じゃないと何をするか。ただ恐怖です」


言いながら私は洋二さんを見る。

そうして歩いているとクレープ屋を見つけた。

私は洋二さんを見る。

「クレープ食べませんか」と言った。


「ああ。そうだな。美味しそうだな」

「ですね」

「...なら食べようか」

「ですです」


そして私達はクレープ屋でクレープを2つ購入した。

両方共にチョコ味だ。

私達はそれを美味しそうにほおばっていると電車が通り過ぎた駅から...見慣れた顔が降りて来た。

それは小五郎さんだった。


「ああ。双海。そして洋二くん」

「こんにちは。おじさん」

「...お父さん」

「今日は仕事が早く終わってね。...どうしたんだ?」

「お姉ちゃんの事に関して」


そう言いながら緊張する洋二さんを見てから小五郎さんに向く。

それから私は「ふむ」と言う小五郎さんを見た。

「取り敢えず私もクレープを食べるよ」と言いながらクレープを買った小五郎さんに改めて向く。


「それで...どういう話だね」

「...お姉ちゃんの浮気に関して」

「...やはりか」

「...やはりか?って、え?」

「...いや。私の予想通りだったね。私の娘の行動がおかしかったというか...まあそうだな。一言で言うなら私が甘かった」

「小五郎さん...」


「まあその事実がはっきりしたならもう言うまでもないよ。つまりは婚約破棄だね」と言う小五郎さん。

私は頷きながら小五郎さんを見る。

そしてチョコクレープを食べる小五郎さん。


「...洋二くん」

「...はい」

「すまなかった。本当に。親として申し訳ない」

「...いや。大丈夫です」

「あの子は自由にさせ過ぎたね。...だからこんな事に」

「...小五郎さんのせいじゃ」


そう私は言いながら小五郎さんを見る。

小五郎さんは「私は確かに君の事が怖いよ。だけどそれは軽蔑だ。その子が言った言い訳にならない。...あくまで君を恐れるばかりじゃ駄目だから」と言う。

それから顔を上げた。


「...君はどうするのかね。この先」

「...俺は一応、アイツを最後まで観察するつもりです」

「それは何処まで観察するか分からないだろう。そんな事をしなくても良い。そこら辺は私が責任を持って何とかする。君がどうありたいかを聞かせてほしい」

「...良く分からないですね」


「そうか」と言いながら食べ終えたクレープの紙パッケージを見る小五郎さん。

オレンジ色の空を見上げる。

そして紙パッケージをゴミ箱に入れてから「もしかして双海さんは君が好きなのかね?」と言う。

私は赤くなりながら「い、いや」と言う。

小五郎さんは苦笑しながら「そうかね」と返事をする。


「私は...君に幸せになってほしい。だけど無理はさせるつもりはない」

「...」

「娘が...迷惑を掛けたね」

「...いえ」

「君が誰を選ぼうとも応援する。...君は私にとっては息子の様な存在だから」


小五郎さんはそう言いながら笑みを浮かべる。

それから「...デートの邪魔だったね」と立ち上がる。

そして「では」と律儀に帽子を胸元に添えてから頭を下げて去って行く。

私達は人込みに消えるまで小五郎さんを見守っていた。

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