第4話 交差する世界


私は佐伯海...私は洋二の許嫁だ。

そして私には洋二以外の2人の恋人がいる。

私は洋二との関係はとても満足している。


私は洋二を誰よりも大切に思っている。

だけど私は彼らを選べない。

誰よりもみんな大切にしたいと思ったのでこうした。

洋二にも彼らにも内緒の事で大変胸が痛いのだが。


「...」


さっき洋二に会った時に結構冷たい反応をされた気がする。

まさかと思うがこの浮気の事がバレた?

そんな訳無いか。

洋二の事を誰よりも大切にしているしな。

証拠が無いし。


「...ハァ...」


そう息を吐きながら校舎を歩く。

それから印刷室に向かう。

何故印刷室なのかというと次の授業で使うものを印刷するのだ。

印刷係になっている私はコピーを取る為の原本を持ってから印刷室に入る。

そして目の前から「あ」と声がした。


「...双海...」

「お姉ちゃん。どうしたの?」

「いや。どうもしてない。というか印刷しに来た」


佐伯双海。

私の義妹である彼女。

常に謎な感じがしていて...まあ正確にいえばミステリアスと言える。

私に対してもどんな考えを浮かべているのか分からない。

だからミステリアスと言えるのだが...正直、警戒しないといけない人間といえる。


「どうしたの?お姉ちゃん」

「...な、何が?」

「幾ら何でも警戒し過ぎじゃない?私そんなに何かしてる?」

「警戒?してないよ。そんなの」

「うーん。そうかな?私からしてみたら警戒している様に見える」

「...」


1つ言うとこの子は物凄く勘が鋭いのだ。

感覚が鋭敏と言える。

私は息を吸って吐いてから落ち着かせる様にそのままコピーをし始めた。


そんな様子に双海は「?」を浮かべたままだったがやがて作業が終わったのか「じゃあお姉ちゃん。教室に帰るね」と言い出した。

それからコピー用紙をいっぱい持ってから双海は印刷室のドアを開けようとする。

その姿に私はドアを支えた。


「有難う。お姉ちゃん」

「...うん。気にしないで」

「相変わらず優しいね。お姉ちゃんは」

「...そうだね。これからも優しいままだから。安心して」

「...そっか。そのままなんだね。...そっか~」


双海は書類を持ったまま私とすれ違った時。

「その優しさがアダにならない様にね」と言われた気がした。

私はばっと効果音が鳴る感じで双海を見る。

そんな双海はニコッとしながら手を振っていた。

今の言葉は何だ。



正直、私の好きな人を裏切って浮気をしたヤツが私の姉とは正直どうしようもない。

正気の沙汰では無いと思う。

そう思いながら私はプリントを抱えたまま歩いていると目の前から「はろはろ」と声がした。

顔を上げるとそこに湊先輩が居た。


「や。重そうだね。一緒に運ぶよ」

「...有難う御座います。だけど大丈夫ですよ。湊先輩」

「本当かい?私にはそう見えないけど」

「重たくないですよ。案外」

「そうか」


そんな湊先輩は「そういえば」と切り出す。

私はプリントを運びながら湊先輩を見た。

湊先輩は「今日...海ちゃん調子が悪いのかな」と聞いてくる。

その言葉に私は「ふっ」と嘲る様に笑い。


「何の事でしょうか?」


と聞いた。

すると湊先輩は「いや。何というか思い悩んでいる様に見えるから」と言ってくる。私はますます笑みが零れそうになる。

そんなに悩んでいるとか馬鹿じゃ無いのかあの女。


「...お姉ちゃんはいつもあんな感じですよ」

「...まあ確かにそうだけどね。他人の為に悩んでくれるしね」

「そうですよ。だから気にしないで」

「...でも気になるんだよ。...ほら。幼馴染だしね」


幼馴染なら察する事が出来ないだろうか。

悪行を知らないだろうか。

私はそう考えながら湊先輩を見る。

湊先輩は苦笑しながら私を見てきた。


「...まあでも」

「...?」

「...悩んでいるのは分かるけど...何か嫌な予感がするんだよね」

「...それこそ気のせいですよ」


私はそう言いながら湊先輩を見る。

正直...嫌な事なんか起こさせはしない。

何故なら私と洋二さんが幸せになる為だ。

このままそんな感じで終わらせない。


「...それはそうと洋二さんの事ですが」

「ほう。どうしたのかい?」

「...洋二さんもお疲れの様ですよね」

「そうだね。確かにね」

「...私、洋二さんの事を義妹として大切に思っていますから...その。もし良かったらおすすめの癒しスポットを教えて貰って良いですか?」


正直あの女。

私の姉の事なんてどうでも良い。

思いながら私は歪んだ笑みを浮かべる。


湊先輩はその事にキョトンとしていたがやがて「うん。良いよ」と答えてくれた。

あくまで私と洋二さんが幸せになる為だ。

その為なら何でも利用して...幸せになろう。

それが例え神様に反逆するとしても、だ。

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