第3話 断層
☆
俺自身の親は...というかあの人は。
大好きだった母親を殺害した。
そして冷たくなった母親に対してあの人は「救急車は呼ぶな」と言った。
あの時に救急車を呼べていたらきっと変わったかもしれない。
正直、心の傷が癒えなかったら俺があの人をぶっ殺している所だっただろう。
「それじゃあ帰ります」
「...ああ。気を付けてな。もう薄暗いし」
「はい。...あ。そうだ。洋二さん」
「...何だ?」
「キスしますか?」と言う双海。
俺は赤面しながら「からかうな」と言いながら横を見る。
その言葉に頷いた双海。
そんな姿に向くといきなり両頬を掴まれた。
そしてそのままキスをされた。
「私は返事をしていません。貴方にキスをしないとは」
「...お前...!?」
「愛していますよ。洋二さん。私は...貴方が大好きです」
「...」
俺は真っ赤になりながら唇を離した双海を見る。
そして双海は「私のファーストキスです。...有難く受け取って下さい」と笑顔になってから俺を見る。
その姿に何も言えず俺は自らの唇を触る。
「じゃあ帰りますね」
「...双海」
「何でしょうか?」
「...その。...すまない」
「...いえ。それが何を差して言っているのか分かりませんが...大丈夫ですよ」
そして双海はそのまま家路に着いた。
俺はその姿を見送ってから家の中を見渡す。
そこには彼女が整えた毛布とかがあった。
俺は「やれやれ」と言いながら溜息を吐く。
「...俺は...情けない存在だな」
そんな事を呟きながら俺は片づけをした。
それから風呂にも入ったりして翌日になる。
ゆっくりと起き上がった。
☆
「おはようございます。洋二さん」
「待て。何をしているんだお前は」
「見て分かりませんか?お出迎えです」
「...それは見れば分かるけど」
双海の事を考えながらアパートの階段を降りて行くと双海が居た。
そしてニコッとしながら手を振っている。
俺は「双海。流石にマズいんじゃないか」と言う。
すると「まあ確かにですね。人通りが多くなったら別れましょう」と笑顔になる。
「...昨日はアイツと話したのか」
「...ああ。裏切り者のお姉ちゃんですか?...まあそこそこには。似非の笑顔を浮かべて接しましたけどね」
「...大変だな。お前も」
「私は大変じゃないですよ。嫌いな姉です。ただそれだけです」
「...そうか」
そして俺達は人通りが少ない道を歩く。
それから通行人が増えた所で「じゃあ」と別れた。
そうしてから歩き出す。
すると目の前から声がした。
「おはよう」
「...海...」
海が何事も無かったかの様に声を掛けてきた。
笑顔で溢れながらだ。
俺はその姿を見ながら笑みを浮かべる。
「おはよう」と言いながらだ。
そして歩き出す。
「何だかお疲れ様だね」
栗毛色の髪の毛を動かしながら俺を見る海。
俺はその言葉に「まあ」と返事をする。
それから(まあ全てはお前のせいだけどな)と思いながらも返事はしなかった。
そして歩いていると「テストが有るよね」と言ってくる。
「小テストか。確かにあるな」
「入学式に卒業式。入試に花見。そして...色々だね」
「...まあ確かにな」
「...洋二はどのイベントが好き?」
「...そうだな。俺は10月の文化祭だな。俺達にとっては最後だろ」
「まあ確かにね」と言いながら海は俺を見てくる。
それから海は「そっか。文化祭が楽しみなんだね」と笑顔になる。
今年はもうお前とは過ごせないだろうけどな。
考えながら歩いていると海は「私も文化祭が好きだね」と笑顔になる。
「...そうか」
そう答えながら歩いていると背後から声がした。
そして飛び掛かって来る。
その人物は運動部の部長をしている佐竹湊(さたけみなと)だった。
褐色肌の小学生の様な女子である。
俺達の共通の幼馴染の様な存在で友人の様な存在だ。
「おっはー!!!!!」
「おう。おはおは。どうした?今日は部活は休みか?」
「試験休みだね。...全く試験は嫌になるよねぇ」
「...でも今年までだぞ。頑張れよお前」
「そうだね。最後にいい思い出を作りたいな」
そんな事を言いながら体側服姿の湊は駆け出してこっちに向いてから笑顔になる。
俺達はその姿を見る。
そして俺は横でクスクス笑う海を見た。
その姿に複雑な感情を抱く。
「ねえねえ。今度さ」
「ああ」
「試験終わったら遊びに行こうよ」
「...分かった。約束だぞ」
俺は笑みを浮かべながら湊を見る。
湊は満面の笑顔で頷いた。
子供かって話だ。
まあ本人が嬉しそうだしな。
...真実を知らせるのがキツイ気がする。
俺達の仲で裏切者が居るっていう真実を。
湊はショックを受けるだろうし。
今は黙っておくか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます