第2話 2歳差


洋二さんと許嫁にしての素質があった、にも関わらずお姉ちゃんはそれを捨てた。

ならば私はそれを利用させてもらう。

それに大好きな洋二さんを裏切ったこの罪はお姉ちゃんに償ってもらおう。

思いながら私はケーキを出す。


「モンブランですよね。好きなケーキ」

「...ああ。よく知っているな」

「それはそうでしょう。私は洋二さんが好きですから」


そう言いながら私はケーキをそのままお皿に乗せた。

それからちゃぶ台に乗せる。

そしてニコッとしながら洋二さんを見る。

洋二さんは複雑な顔をした。


「...お前はこれからどう接するんだ?自らの姉に」

「私は変わりませんよ。何も。自らの姉は姉です。なので...仮面を被ってでも接します」

「...それはしんどくないか?」

「しんどくないです。だってそもそももう洋二さんに偽っていましたしね色々と。だから偽るのは慣れています」

「...そうか」


私は心配する洋二さんを一蹴してからコーヒーと紅茶を用意した。

それから私は対面に座って洋二さんを見る。

洋二さんはその姿に苦笑いを浮かべながら対面に腰掛けた。

そして私を見てくる。


「じゃあいただきます」

「そうですね。どうぞ」


それから私はショートケーキを食べる。

やはりこの店は間違いない。

これなら洋二さんも。

考えながら顔を上げるとそこに私を見る洋二さんが居た。

うん?


「ただのケーキでも美味しそうに食べるよな。双海は」

「私はそんな感じに見えます?」

「そうだな。美味しそうに食べている様に見える」

「ふむ。それは洋二さんが居るからでしょうね」

「...お前本当に俺が好きなのか」

「私は決して偽ってませんよ。その点は。私は洋二さんが好きです。昔から」


私はその気持ちは偽って無い。

そもそも私が勝つ筈だったのだから。

この戦いに、だ。

許嫁の話さえなかったら私が間違いなく勝っていた。

何故負けたのか...今でも悔やまれる。


「...俺なんかを好きになっても意味無くね。...だって...貧乏だし」

「私達は確かに小金持ちですね。...だからどうしました?愛にそんなの関係無いですよね。私は運命の人が洋二さんだっただけです」

「しかし俺の人生を知っているだろお前」

「...お母様がお父様に殺された人生ですね」


洋二さんは虐待されていた。

それ故に...母親も虐待されていた。

それから屑な父親は母親を衰弱させて殺した。

そのまま殺人罪で父親は捕まっている。

洋二さんは好きだが洋二さんのお父さんはぶっ殺したい気分だ。


「...だから俺に関わるのは」

「犯罪者の息子だからですか?...そんなの関係無いですよ」

「...」

「...もう一度言います。私の運命の人は洋二さんでした。これから幸せになりましょうよ。洋二さん」

「お前と付き合っている前提か?」

「私は勝利を確信しましたから」


そう言いながら私はちゃぶ台に置かれていた洋二さんの手を握る。

それからニコッと微笑んだ。

私は間違いなくお姉ちゃんに勝てると思う。

何故なら私の愛は無限大だ。

屑な姉と違う。


「...」

「...洋二さんの人生が殺人事件で大変だったのは知っています。自殺したかったのも知ってます。クラスメイトからのいじめ。そして教師からのいじめも知っています。だからこそ私は...洋二さんに付いて行きます」

「...お前...」


私はお姉ちゃんの様なゴミ屑と違う。

そもそも私は洋二さんしか見てないのだ。

幅広い視野を持っていても。

IQが130あるとかいう天才の私で辞書が好きな私であってもどれだけあっても私は洋二さんしか見てない。


「...私は洋二さんを絶対に裏切らないし大切にします」

「...何でお前はそんなに俺が好きになったんだ」

「私は洋二さんに...そうですね。あの日。私の描いた絵を褒めてくれたから。だから好きになりました」

「...は?」

「コンテスト。小学校3年生の時に声を掛けた女の子。覚えていませんか?あの日、眼鏡の根暗の子が居たの」

「待て。どうなっている。あれは...あ」


そうですね。

あの日の私の名前は野菊。

野菊双海だった。

何故ならまだその時点でお姉ちゃん一家と再婚してない。

だからこそ名前が違ったのだ。


「...あんな根暗な子がこんなに?」

「私は洋二さんに釣り合う為にこれだけ変わったんですよ。4年生の時に恋をしてから頑張りました」

「...女子ってそんなに変わるもんか?」

「変わります。一途な思いを抱けば女の子ってのは」

「...」


「私はお姉ちゃん。2歳も差が有るお姉ちゃんに差を抱いていました。だけどこの形になった以上は私がお姉ちゃんの代わりになりますよ」と言いながら私は柔和に洋二さんの手を両手で握ってから見つめる。

そう。

恋する女の子だから。

まあ私達を舐めた罰はお姉ちゃんにいつか受けてもらうつもりだ。

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