第5話 ふざけた戦闘配置に激怒
主だった隊長が千代ヶ岡陣屋に集まった。
「土方さん何なんですか。あの配置図理解出来ないっすよっ。」
「本多君の言うとおりです。何で鷲ノ木から鹿部に貴重な戦力を配置しなきゃなんないんですか。ホント何考えてんだか。」
「室蘭開拓って何、薩長に駆ってからでいいんじゃないの。」
「榎本はブリュネの作戦を参考にしたと言ってましたよね。滝川君ブリュネってどんな人なのさ?」
「砲兵隊の大尉さんです。ヨーロッパの戦闘は規模がめちゃくちゃでかいって聞いてます。渡島半島の比じゃないらしいです。戦闘兵の数も半端じゃないんだって。だからヨーロッパの感覚で作ったんじゃないですかねぇ。」
「大鳥さんもそれに参加してたんだろう❔!」
「馬鹿かお前、大鳥に戦争のことは分かんないっしょ、居ても居なくても一緒。」
「中島さんはどう思っているんですか。」
「星君、ここに居る者の中であの配置図を支持する者はいると思うかい。」
「いる訳ないべさ。」
「皆はどうなんだい。」
全員「「おかしいっしょ。」「ふざけているよね。」「話になんないっしょ」
「そうだ、わしも皆と同じ考えだ。誰が聞いてもおかしいものはおかしい。それを榎本は平気で発表したブリュネの考案として。何か裏があるんじゃないだろうかと思っている。」
「あの馬鹿連中、何たくらんでいるんでしょうね。」
「あいつらいっつも榎本の部屋でこそこそやってます。そして夕方になったら武蔵楼でどんちゃん騒ぎですよ。」
「皆、俺も間違いなく何かたくらんでいると思っている。」
「土方さん、何たくらんでるのさ。」
「まだ、分かんねぇ。」
「あいつら直参だと言うプライドがあるんですよ。俺達を下に見ているからね。」
「そうだ、そうだ。大鳥なんかその典型だよ。戦はめっちゃへたくそなのに、戦闘の時なんて絶対弾の届かない場所にいるんだぜ。先頭が終わって市中を行進するときだけ先頭になって馬の上で偉そばってんだから皆笑ってんです。町の人があの先頭のお偉いさんだけが服ピカピカだね、皆ボロボロなのにさーだって。思わず笑っちゃいましたよ。」
「土方さん、最近榎本のことをチャラ男って呼んでるって聞いたんだけどチャラ男って何なの❔」
「簡単に言うと、威張ってみたりチャラチャラしたり女好きで酒好きで気の弱い男のことだよ。」
「榎本さんて、ずば抜けて賢い人だと思っていました。違うんですか?」
「春日さん、ずば抜けて賢い人が暴風雨の中、仙台に向かって出港するかぃ、俺死にかけたんだぜ。それに開陽を沈没させるかねー。俺には馬鹿としか思えんがね。」
「伊庭の言う通りじゃねぇのか。チャラ男にチャラ吉、太鼓持ちが三匹。そんなとこだ。話は変わるが皆、守るべき場所は決まった。榎本は戦闘配置を変えるつもりはねぇ。薩長は絶対乙部・江差方面に上陸する。松岡・人見・伊庭・春日・星・滝川・永井・天野お前達は激戦地を守ることになる。徹底的に研究しておいてくれ。弁天岬砲台と二股は俺が見る。中島さん千代ヶ岡頼んだよ。雪が解けるまでまだ時間はある。連絡は密にしておけよ。頼んだぞ。」
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