SM少女アミちゃん編
好色・好色・好色
プロフィール画像を舘ひろしからBMWに変えた効果は凄まじく、ミキさんと訣別した後の僕には毎晩のように夜の誘いが届くようになった。一体世間のどこにこれ程の性欲が隠れていたのだろうかと不思議に思う程、淫靡な感情が出会い系サイトには渦巻いていた。問題はこの感情が、出会い系サイト発足以前からあったかどうかである。もしあったのであれば、人間の欲望をテクノロジーが叶えた理想的な事例となろうが、無かった場合は人間の欲望をテクノロジーが拡張してしまった悪しき事例である。僕は後者に思えてならない。読者諸賢も普段抱く自分の欲望を振り返ってみてほしい。ナンパをする勇気は無いが可愛い異性と仲良くなりたい、家にご飯を届けてほしい、何も考えずに時間を潰したい。これら全てがテクノロジーから生み出されたことを疑う余地は無いであろう。そしてこれらの欲望はスマホ一台で簡単に叶えられてしまう。しかしそれと引き換えに僕らは、どんどん不具になっていくのだ。仕事だけでなく、家事や娯楽までもテクノロジー頼りになった僕らは最早いきずりの女性の気を引くことも、料理を作ることも、時間を潰す趣味を考えることもテクノロジー無しでは出来ず、その代わりに電子機器を弄る技術だけが上達していく。こうしてテクノロジーによる欲望の拡張は人間の心身の縮小を生む。僕は一刻も早くこのテクノロジーによる欲望の拡張からの解放を目指している。
とは言っても、決意したところで人はそう簡単に行動に移せるものでは無い。僕の好色も第二のマミちゃんをモノにする為という口実を設けはしていたものの、その実はテクノロジーによって生み出されたドロドロとした性欲に支配されていたのだ。生クリームを僕のペニスに塗りたくってから咥える大学院生、シャワー中に僕の衣服を畳んでおいてくれるという母性を覗かせる尻に刺青が入った人妻、スタンハンセン並みの巨体とそれに見合わぬ小さな乳首を持った小学校教員。様々な乙女から夜の誘いを受け、僕はその全ての誘いに乗り、破竹の勢いで肉体関係を築いていった。車で流す曲も『Perfect Situation』から『Tired Of Sex』に変わっていた。純愛にもふしだらな愛にも寄り添ってくれるのがweezerである。
大学までは画面上の女性達に射精し、社会人になってからは出会い系で会った女性達に射精し、僕の体は完全にテクノロジー漬けになってしまっていたが、僕の心だけはテクノロジーの浸食から辛うじて逃げ延びていた。体を重ねた女性達が恋人然とした態度を取って来ることも多々あったのだが、出会い系で会った女性相手に僕の心は微塵も動かなかったのである。無論容姿に恵まれた女性も居たが、マミちゃんの時の様な恋心が芽生えることは無く、彼女達から如何に女性一般への触れ合い方を学ぶかにしか気が回らなかった。僕は出会い系で出会う女性一人一人に人間的魅力を感じながらも、数ヵ月経つと僕の中で彼女達は色彩を失い、どのような触り方をすれば悦んでくれたかというアーカイブとしてしか記憶されていないことに気付くのであった。そう、一人を除いては。
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