赤と黒
読者諸賢は意外に思われるかもしれないが僕はΦとその後も逢瀬を重ねた。僕はジュリアン・ソレル的情熱に駆られ、Φを落とそうとし、Φも僕を金という阿片に落とそうと執着した。自分の言うことに真っ向から反論してくる若者が新鮮だったのかもしれない。とにかく僕らは週に一度のペースで会い続け、その度に僕はいやという程金と中田敦彦のyoutube大学の話を聞かされた。そして僕はΦ相手にめげずに虚学の話をし続けたのであった。何度逢瀬を重ねようと、僕には拝金主義の片鱗すら見られず、Φにも風流心の片鱗すら見られなかった。僕らの議論は毎回平行線に終わり、互いに異性として惹かれ合うことも無かった。ただ僕はどうしてもΦを抱きたかった。前時代では考えられない稼ぐ女と稼がない男、美女と醜男、唯物論と唯心論、僕とΦの関係はもっと大きな概念の代理戦争に思えてならなかった。僕のこの情熱が一種の歪んだミソジニーから来ていることは自認している。それでもこの戦いに負ける訳にはいかなかった。彼女を抱ければ代理戦争の勝利だけでなく、どんな異性が来ても通用する肉体的接触の不文律を手に入れることが出来るであろう。世間は僕から見たΦを高嶺の花だと言うかもしれないが、僕はヴァンダレイ・シウバに挑む吉田秀彦のように全く気持ちで負けていなかった。
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