出張中、普段より性欲抑えられない説

 翌日からは配属地域毎に新入社員研修が始まった。今日こそ二人に会える。昨日とは打って変わって僕は上機嫌であった。小洒落たホテルの朝食をゆっくりと時間をかけて平らげ、久方ぶりにワックスを付けて部屋から出た。僕が部屋から出ると丁度横の部屋の扉が開き、中からハルカちゃんが出て来た。僕らは隣同士で泊まっていたのだ。まずい。昨日、資本主義社会への参入とニコチンの過剰摂取により精神的にも肉体的にも追い詰められていた僕は数時間に渡って自慰行為をしていた。見ていたアダルトビデオのプレイも特殊であったし、音量も大きかった。部屋から音漏れがしていたらと思うと気が気では無かった。しかし、鉢合わせたからには声を掛けないのは不自然である。


「今日から研修頑張りましょうね。」

僕は焦りと可愛い子に話しかける緊張を必死に押し殺しながら声をかけた。

「そうですね!これからよろしくお願いします!」


彼女は何故僕が自分を認識しているのか、怪訝な顔をしながらも明るい返事をしてくれた。互いに軽い自己紹介と他愛の無い会話をしながら会場に向かった。特段会話が盛り上がることも無かったが、これでいいのだ。他愛の無い会話が最も重要だとどこかのナンパ師が言っていた気がするし、「猫と女は呼ばないときにやってくる」そうボードレールも言っていた。下心を感じさせず、自然な会話をする。今日はそれで十分だ。


 会場に着くと、僕らの到着は最後の方であったらしくほとんどの席が埋まっていた。皆緊張の面持ちで席についており、打ち解けた様子も無かった。いい地域に配属されたものである。昨日のツーブロック男達より、彼らとの方が上手くやっていけそうだ。軽薄な喧噪よりも沈黙の方がよっぽど価値がある。僕は最前列に用意されていた座席に座った。隣の隣にはマミちゃんが座っており、横から見ても圧倒的な大きさを誇る瞳に吸い込まれそうになった。辺りを見渡すと二人以外にも可愛い女の子が何人も居た。いい会社に就職したものである。昨日もオンライン麻雀などせずに周りを見渡していればよかったと僕は後悔した。

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